MBAエリートたちが、"失敗"を急ぐ理由

仏INSEADには、良質な"失敗"が用意されている

まず、君たちが提案しているツアーや料理教室の収入だけで、本当に女性たちのトレーニング費用を賄い、なおかつ利益が出せるのか。それから、インド人の女性たちは、本当にツアーガイドを喜んでやってくれるだろうか?自分たちの貧しい生活をガイドするなんて、心理的な抵抗はないだろうか? そのあたりの説得材料がまだ足りないと思うね」

吉田佳世(よしだ・かよ)
1986年東京都生まれ。高校入学までの5年間をカナダ、アメリカ、ベルギーで過ごす。2009年アメリカ・ボストンのタフツ大学を卒業後、東京のJ.P.モルガン証券株式会社へ入社。M&Aアドバイザリー業務などに従事。2012年8月よりフランスのINSEADへ留学
(写真はJ.P.モルガン時代に訪れたモザンビーグの孤児院にて。この経験がMBAに挑戦する直接のきっかけになった)

時間が足りなかったというのは、言い訳にならない。投資家は、どんなに社会的な意義があっても、儲かるビジネスにしか投資しない。

「正直、議論している中でも収益モデルが弱いという認識がありましたので、やはりそこを突かれたか、というのが実感です。

目的がどんなに明確であっても、起業する以上は、現実的なビジネスプランがないと成功しません。入学早々、投資家から直接フィードバックがもらえて、勉強になりました」 

思いの”先”にあるものを見つけなさい

起業合宿から1カ月が経った、2012年11月。アフリカで活躍する世界的な社会起業家が、相次いで来校した。

1人はジェイ・クロッペンバーグ氏。もう1人は、サミール・ハジー氏だ。2人ともINSEADの卒業生。起業家をキャンパスに招くプログラムの一環で来校し、学生はあらかじめ希望をすれば、1対1で話をすることができる。吉田さんも早速、2人との面談希望を提出した。

ジェイ・クロッペンバーグ氏は、マッキンゼー・アンド・カンパニーの元コンサルタント。INSEAD卒業後、ヨハネスブルグの開発金融機関で働き、2011年、アフリカン・スクール・オブ・エクセレンスというNPO法人を創立した。ガーナと南アフリカを拠点に、経済的に恵まれない子どもたちに高等教育を施すNPOだ。

吉田さんは、「なぜ、初等教育ではなくて、高等教育なのですか?」と素直に質問してみると、現地の事情に詳しいクロッペンバーグ氏ならではの答えが返ってきた。

「国の経済力を上げるには、小学校教育だけじゃだめなんだよ。高等教育との間に大きなギャップがあるんだ。子どもたちが、中学校、高校レベルの教育を受けられないと、国全体の経済レベルは上がっていかないし、貧しい人たちの生活もよくならない」

クロッペンバーグ氏は続ける。

「アフリカン・スクール・オブ・エクセレンスでは、授業にグループワークを多く取り入れている。これは、僕自身、学生同士が学び合うことの価値をINSEADで学んだからなんだ」

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