世界の富裕層の間では、わが子をエリートに育てる環境を求めて国境を超える「教育移住」が以前から盛んに行われてきた。最近、その移住場所に変化が起きている。英語だけでなく、今後は中国語の必要性を感じ、欧米からアジアでの教育を望む親が増えているのだ。
普段から世界の最前線で活躍し、世界最高のものに触れる機会の多い富裕層は、21世紀をエリートとして生きるには世界全体を知る「グローバル力」が不可欠だということに気付いているということだろう。
中でも、昨年秋にマレーシアのジョホールバル(マレーシア第2の都市。シンガポールに国境を接し、大規模都市開発イスカンダル計画を実行中で今後注目の場所)にできた英国名門寄宿学校、マルボロカレッジ・マレーシア校には大きな注目が集まっている。マルボロのイギリス校は、170年の歴史をもち、英国皇室ウィリアム王子と結婚したキャサリン妃の母校としても世界的に知られている。同国のオックスフォード大学やケンブリッジ大学をはじめ、世界の名門大学に多くの人材を輩出し、学力、学費ともに世界最高レベルだ。
マレーシア校にもすでに世界各国から富裕層を中心に、貴族階級の子女が多く通っている。まだ1年経たないアジア初の分校には、実は日本人がもう10人以上通っている。そこで、2月9日発売号の週刊東洋経済
「海外移住&投資」では、子どもをグローバルエリートに育てるためにアジアへ教育移住する日本人富裕層の最新の動きを詳しくリポートしている。ここでは、マルボロ・マレーシア校のロバート・ピック校長のインタビューをお届けしたい。マスコミのインタビューに応じたのは、初とのことだ。
――なぜ、イギリスの名門校がアジアに分校を作ろうと思ったのでしょうか?
これまで、イギリスで170年間続けてきた一流の教育は正しいし、誇りがある。しかし、学校として生徒たちに「グローバル市民」として育つチャンスをきちんとあげられなかったのでは、とも感じていた。たとえば、学校ではグローバルネットワークに身を置く機会を生徒たちに与えていない。
そこで、2005年にマルボロカレッジ・イギリス校はグローバル教育をするには、アジアに分校を建てるしかない、と決意した。なぜ、アジアなのか。その理由は明白だ。世界で最も経済成長が著しく、21世紀では間違いなく最も力を持つ地域と考えられるからだ。
2007年からは、どこで実際に開校できるのかを本格的に探り始めた。実際、インド、香港、韓国、ベトナム、シンガポール、そしてマレーシアなどいろいろな国を候補に入れた。その中で最も条件にあったのが、マレーシアだ。
――確かマレーシアは今、国を挙げて「教育のハブ」になろうと、政府が誘致を続けていますね。
そのとおりだ。広範囲で使用可能な土地が確保できたうえに、利益ではなく純粋に教育をしたいというわれわれの考え方、思いがマレーシア政府と一致した。シンガポールも魅力的だったので、マレーシアのジョホールバルがシンガポールから約30分で、今後はシンガポールとさらに結びつきを深くするイスカンダル計画もいい。
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