途方もない廃炉作業、その第一歩が始まった 「事故2年後」の福島第一原発

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今回の取材でのもう一つの大きなポイントが、多核種除去設備「ALPS」(写真左)だ。現在、敷地内では汚染水の増加に歯止めがかからず、貯留用タンクや地下水貯蔵用タンクの増設を続けている。

東電によれば、現在のタンクでの汚染水貯蔵量である約26万立方メートル(貯蔵容量は約32万立方メートル)に対して、14年上期までに約8万立方メートルを増設する計画だ。さらに、15年中ごろまでには最大で70万立方メートルの貯蔵量が必要になるという。

増え続ける、放射能汚染水

汚染水の増大を抑制するための取り組みとして、東電では地下水のバイパス設備を建設することで、汚染の著しい原子炉建屋への流入を抑制しようとしている。その際、揚水した地下水は一時的にタンクに貯留し、水質に問題がないことを確認したうえで海に放水することを計画している。

一方、汚染水については新たに建設中のALPSが稼働すると、ストロンチウムなど62核種が取り除けるという。ただし、水素の同位体であるトリチウムだけは除去できず、東電は将来、希釈して海に放出する可能性を否定していない。また、発生した廃棄物を収容する高性能容器(HIC)の強度に問題があることが判明。その対策を迫られたことで、ALPSは当初の稼働予定よりも大幅に遅れている。

それでも4号機からの使用済み燃料取り出しや、汚染水対策はまだ手を付けやすい部類に入る。建屋内への立ち入りが困難な1~3号機(右は3号機)では、炉心溶融した燃料どころか、使用済み燃料プールからの燃料集合体の取り出しの道筋すらまったく描けていない。高橋所長は、スリーマイル島原発の廃炉作業よりもはるかに状況が厳しい状況であると認めている。

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