ずさんな原発運営のツケに苦しむ電力業界 再稼働のハードルは高い

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関西電力・大飯原子力発電所の敷地内に走る断層をめぐる調査が迷走している。

「大飯原発の最重要施設の直下に活断層は存在する」──。11月4日に開かれた原子力規制委員会の評価会合で、渡辺満久・東洋大学教授は断言した。同教授を含む5人の有識者調査団はその2日前、規制委によって大飯原発へ送り込まれ、地層の調査をしていた。以前から活断層の疑いを指摘していた渡辺氏は現地調査で「クロ」を確信し、全国で唯一稼働中の大飯原発3、4号機の即時運転停止を主張。「現在になって問題が顕在化した理由は、電力会社の不適切な調査と、非科学的な解釈に基づく国のずさんな審査にある」と批判した。

活断層「クロ」なら廃炉

2度にわたる評価会合では調査団内部でデータ不足との指摘があり、結論持ち越しで追加調査となった。ただ、「活断層と考えても矛盾はないが、地滑りの可能性もある」というのが調査団のコンセンサス。規制委の田中俊一委員長は調査前、「クロか濃いグレーなら、原発を止めてもらう」と言明していただけに、渡辺氏と同様、現段階で運転停止すべきとの声は高まっている。

原子力施設敷地内における活断層の存在が疑われているのは大飯に限らない。今後、敦賀、東通、志賀、美浜の各原発および高速増殖炉もんじゅの敷地内でも追加調査が予定される。活断層が確認されれば、規制委が行政指導で運転停止を求め、その後廃炉となる可能性が高い。

一方、ずさんさが指摘されてきた原発規制の抜本的見直しに向けても、来年7月を期限に原発の新たな安全規制の策定が進んでいる。福島第一原発事故が証明したように、シビアアクシデント(過酷事故)対策など日本の安全基準は、国際標準から大きく立ち遅れていた。それを世界最高水準へ高めようというわけだが、航空機墜落やテロへの対策なども含め、内容は依然定かではない。今後、原発の再稼働は新基準を基に判断されることになり、電力会社にとっては基準の厳格度いかんで、バックフィット(適合化対応)に多大なカネと時間がかかるため、各社とも戦々恐々としている。

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