ずさんな原発運営のツケに苦しむ電力業界 再稼働のハードルは高い

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しかし、言い値でスンナリ通らないのが料金改定だ。値上げ申請の場合、電気事業法に基づき、経済産業省が設置する電気料金審査専門委員会の審査や一般の公聴会などを経て、認可まで約4カ月かかる。電力会社は原則として先行き3年間の年平均総原価をベースに値上げ申請幅を決めるが、東電のように、査定で原価が追加カットされ、値上げ幅も圧縮される可能性は高い。

原価の中でも特に焦点となるのが人件費。今年3月末に決まった審査要領では、常用従業員1000人以上の企業平均(10年度は年収596万円)を基本に査定を行うとされる。平均年収806万円の関電、829万円の九電との開きは大きい。電力会社の平均年齢は高めとはいえ、相当な削減を求められる可能性は高い。はたしてそれがのめるのか(東電は590万円まで圧縮した)。

ここに来て政局も風雲急。衆院解散となり、エネルギー政策の行方にも不透明感が高まっている。各世論調査で伝えられる次期総選挙での自民党優勢は、原発推進を望む電力業界にとり朗報かもしれないが、「脱原発」を掲げる野党第三極の台頭、大同団結、政権参画いかんで政策の方向性は大きく変化しかねない。

電力会社の経営は混迷の渦中。だが政権がどう変わろうと、原発事故を境に、業界と規制当局がもたれ合う「原子力村」の論理は通用しなくなった。規制の枠組みが激変する大転換期において、電力業界は旧体質との決別を迫られている。

(本誌:中村 稔 =週刊東洋経済2012年11月24日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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