東電は破綻処理して発送電分離のモデルに 論争!発送電分離

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――八田達夫・学習院大学特別客員教授に聞く

 これまで日本の電力供給体制においては、「発送電一貫」「地域独占」「総括原価方式による規制料金」が当たり前のように維持されてきた。
 しかし、欧米ではすでに発送電分離が主流であり、中立化された送電部門を前提に発電や電力小売りの自由競争が進み、需要家は多様な電力会社や料金メニューを選べるようになっている。再生可能エネルギーを含む新たな発電事業が育つ土壌としても、送電網の中立性、公平性は必須と言われる。大規模集中電源に依存した現行の電力システムの限界が「3.11」で明らかになった今、将来のエネルギーミックス見直し論議と並行して、発送電分離が大きくクローズアップされている。
 経済産業省では総合資源エネルギー調査会総合部会において、今年2月から「電力システム改革専門委員会」(委員長・伊藤元重東大教授)が開催され、発送電分離を含めた電力システム改革の制度設計が議論されている。7月には「基本方針」が出され、11月から再開されたが、最終的な結論は年明けに持ち越されている。基本方針として小売り自由化、発送電分離が示されているものの、原子力発電所停止による経営悪化にあえぐ電力業界は改革論議に異を唱えており、総選挙後の新政権が改革専門委の検討結果をどこまで尊重するかも不透明だ。
 そこで東洋経済では、発送電分離を中心とした電力システム改革に関する有識者の意見をシリーズで紹介していく。立場や主張の違いを考えた人選とした。第1回は、電力システム改革専門委員会の委員でもある八田達夫・学習院大学特別客員教授に聞いた。

「法的分離」なら、人事など親会社からの独立性担保が条件

――電力システム改革での発送電分離のあり方についてどう考えていますか。

電力自由化は基本的に送電線を多様な発電主体や需要家に開放し使ってもらうということだから、送電線を所有する会社が発電も行っていたら自由には開放できない。送電線を持つ会社が中立的になるためにはどうすべきかが根源的な問題だ。

送電事業を中立化する方法はいろいろあるが、最もスッキリした形が「所有権分離」だ。ただ、私有財産権を持つ電力会社に所有権分離を命令することは、日本の現行法においては簡単ではない。米国でも私有財産権が制約となって所有権分離ができない州が多い。

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