東電は破綻処理して発送電分離のモデルに 論争!発送電分離

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自由化すれば、需給逼迫時には電力料金が上がって需要が抑制されるし、供給も増えるので、停電のリスクが減る。需要ピーク時に節電すれば需要家は報酬がもらえ、余剰電力を持つ発電会社にも供給に対して大きな報酬が与えられる。こうした「リアルタイム精算」の仕組みがないことの危うさが、福島原発事故後の計画停電で明らかになった。

2番目のメリットは、多様な競争促進によって発電コストが下がることだ。確定数量契約になれば、電力会社は余剰電力を持つ必要がない。ドイツで起こったように、資源の浪費がなくなり、発電コストが下がる。

公的管理下の東電なら私有財産権も大きな支障にならない

――公的管理下にある東京電力から発送電分離を進めるべきとの議論があります。

東電は賠償金など原発事故費用をすべて払えるわけはないから、資産をすべて売却し、売却益を使って被災者を含めた債権者に支払ったうえで、破綻させて清算し、まったく新しい会社として立ち上がらせるのが本来の原則だ。つまり事故費用に関しては、株主と債権者が相応の負担をするべきだ。ただし債権者の1つである被災者に対して、政府が破産後の責任を負うのは当然だ。

清算の過程で、送電線を将来の送配電収入の現在価値で国に売却すれば、私有財産権に抵触せずに東電を所有権分離できる。国または政府出資の別会社(新生・東電)は、東電から購入した送電施設を用いて送電事業を運用する。当面はカンパニー制で行くとしても、いずれは破綻処理を行い、所有権分離をすべきものと考える。これは全国における発送電分離のモデルになろう。

――国が送電線を運営するとなると、効率性や安定供給などで問題が生じませんか。

完全に国が運営するとなると効率化のインセンティブがない。そのため、ノルウェーやスウェーデンなどは、国営送電会社の収入の総額に上限をつける一方、費用には制限をつけないことでコスト削減のインセンティブを付けている。また、送電線の設備投資の節約による停電が起こっては困るので、送電会社には、停電が起きた場合は被害者に対して全額補償する義務を課している。さらに、家庭向けには停電の度合いに応じて、電力会社の報酬率を下げさせている。

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