東電は破綻処理して発送電分離のモデルに 論争!発送電分離

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送電会社とすれば、コスト削減で利益を高めようとするが、投資を節約しすぎて停電を起こせば大きなペナルティを課されるので、最適な規模を計算したうえで投資を実施している。そうしたインセンティブを働かせやすくする意味では、完全な国営会社よりも、規制をかけたうえでの半官半民や民営企業のほうが望ましいだろう。

原発のリスクを銀行と電力会社が認識すべき

――東電を破綻させると、電力業界全体に対する銀行の姿勢に影響が出そうです。

たとえ銀行が逃げたとしても、原発を持つことにはそういうリスクがあるということを電力会社に認識させる必要がある。政府が支援することを前提に、電力会社が原発をやり続けること自体が問題だ。私は原発に反対というわけではないが、原発を続けるのならば、銀行がついてくるぐらいに原発の安全性を高めなければいけないということだ。

――東電管内だけが所有権分離で、それ以外の電力会社は法的分離という形でいいと。

それでいいと思う。将来的にはすべてが所有権分離になるのが望ましいが、法的分離はそこへ向けた一里塚といえるだろう。

現状では、株主の私有財産権という経済原則をねじ曲げてまで所有権分離をすることはできない。ただ、将来的には原発はコストとリスクが高く、どの電力会社も持ちたくないと思うようになるだろう。そうしたときに、所有権分離を条件に原発を国が引き受けるのであれば、株主にとってもメリットがあるだろう。

 (撮影:今井 康一〈撮影時点は11年4月〉)

中村 稔 東洋経済 編集委員
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