東電は破綻処理して発送電分離のモデルに 論争!発送電分離

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これに対して、「法的分離」というやり方がある。子会社として送電部門を分社化し、配当金は親会社に払うというもので、私有財産は侵害されない。この場合、送電線を持つ子会社は独占を認められる代償として、ライセンス制で政府の規制下に置かれることによって中立性を保つことは可能となる。現在の法体系からいっても実現しやすい。

法的分離ではフランスがモデルとなるが、送電会社の人事は国が握っている。国も業界の影響を受けることがあるので完全ではないが、発電会社と社員が行き来したり、送電会社の株主総会で発電会社が介入したりすることなどを規制することで、中立性を担保している。発電会社や持株会社にとってのメリットは、総括原価方式による送電料金からの安定した配当が入ってくることだ。

日本の電力システム改革委員会の議論では今のところ、こうした法的分離の方向で進めようということになっている。せめぎ合いは、どこまで人事の独立性を担保するか、株主総会での親会社の発言権をどうするかだが、少なくともフランスぐらいの中立性担保は必要だ。

送電部門の中立化と価格メカニズムによる需給調整が自由化の要

はった・たつお●国際基督教大学教養学部卒。1973年ジョンズ・ホプキンス大学経済学博士号取得。オハイオ州立大学経済学部助教授、ジョンズ・ホプキンス大学経済学部准教授・教授、大阪大学社会経済研究所教授、東京大学空間情報科学研究センター教授、政策研究大学院大学学長等を経て、2012年から学習院大学経済学部特別客員教授。電力システム改革専門委員会委員。

――発送電分離のメリットはどこにあるでしょうか。

発送電分離で送電部門が中立化することによって、発電、小売り部門の自由競争が促進され、需要家との契約も変わってくる。

海外の大口電力の相対契約では、価格だけでなく時間ごとの取引数量まで決める「確定数量契約」を採っている。それに対して日本では、価格だけ契約して量は決めないという「使用権契約」を採用している。そのため、需要家は夏の電力ピークの時でも決められた料金で好きなだけ使用し、発電側はその電力量に追従して発電しなければならない。この制度の下で停電を起こさないために、日本の電力会社は大量の余剰発電能力を抱えていた。送電線についても、「送電線のキャデラック」と言われるぐらいに余裕を持って造っていた。そうしたコストは総括原価方式で顧客に転嫁できた。だから「使用権契約」は電力のコストを非常に高いものにしていた。

ところが、原発が停止して余剰発電能力がなくなった今、この体制は逆に停電のリスクを高めている。時々刻々の価格変化によって需要量を調整するメカニズムがないからだ。

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