勤務19年で手取り16万円、保育士の実態 書類に追われ、ケガにビクビク
保育士のなり手が足りない。背景には低賃金と過重労働がある。長時間保育の子どもや低月齢の乳児が増え、保育士一人一人の仕事量も責任も増える一方。
保育現場でいま何が起きているのか。
都心から電車で1時間弱のベッドタウンに立つある保育園の朝は早い。開園は午前7時だが、6時45分の早番保育士の出勤を待ち構えたように、保護者に連れられた園児たちが登園する。保護者は替えのオムツや着替え、食事用エプロンなどを定位置にしまい、保育士に子どもを預けると、駅に駆けていった。こうして午前8時前には在園する園児の3分の1の30人ほどが登園する。閉園時間の午後8時まで最長で13時間、保育園で過ごす子どもも少なくない。
保育士になって10年目の女性は言う。
「待機児童問題が深刻になってから低月齢の乳児の受け入れが増え、体力的、精神的に重労働になりました。長時間保育の子どもたちも年々増えていて、保育士のローテーションもぎりぎりの状態。体調が悪くても休みたいと言うのも気が引けます」
トイレに行けず膀胱炎
その女性は4歳児クラス18人の担任を1人で担当している。早番勤務のときは朝から息つく間もなく、補助の保育士が付いている時間帯にトイレに行こうと思うが、子どもに話しかけられたり、トイレに行きたいと言い出す子がいたりして、我慢することも多い。トイレに行かずに済むよう水分を取らずにいたら、昨年秋に膀胱炎になった。周囲にも膀胱炎に悩む保育士は多い。
「保育現場は余裕が全くありません。人の子育てを支援しながら、長時間労働なので自分の子育てがおろそかになってしまい、辞めていく人も多い。こんな職場で、子どもたちとちゃんと向き合えるのか、安全を守れるのかと、毎日自問自答しています」