勤務19年で手取り16万円、保育士の実態 書類に追われ、ケガにビクビク
川崎市にあるすこやか諏訪保育園の奥村尚三園長(55)もこう言う。
「大切な命を預かっているという責任と、子どもたちの心身の発達を支援する仕事の内容や量を考えると、現在の給与は見合っていない」
奥村園長によると、保育士たちは専門的知識を生かして子どもたちそれぞれの発達を支援する。遊びも指導計画に基づいていて、例えばお散歩一つにも狙いや目標があるという。さらに園児の様子から家庭の状況を察知し、子育てで孤立したり、精神的に不安定になったりしている保護者への支援も担うなど、難しい業務を行っている。
保育の専門家として、これまでは認可保育園の運営には常に、保育士2人以上の配置が義務付けられていたが、国は保育士不足解消のため、今年4月から子どもの少ない朝夕に限り、保育士1人に加え、研修を受けた保育ママなど資格を持たない人による保育を認めるようにした。この規制緩和に対し、現場では「朝夕は異年齢の子どもを一緒に保育するのでトラブルが起こりがち。逆に専門性を備えた保育士の確保が必要」「無資格者ができる仕事だと思ってほしくない」という反対意見も多い。
毎日仕事を持ち帰り
福祉保育労保育部会事務局長で元保育士の佐々木和子さんは言う。
「自身の保育経験をもとに保育をする年上の無資格者に対して、若い保育士が指示や注意をしづらく、ストレスが増えたり、一人で業務を抱え込んだりして負担が増えています」
保育士の過重労働の原因はほかにもある。まずは膨大な書類書きだ。都内の子育てサポートセンターで働く男性保育士(28)は、認可保育園で働いていた当時、国の「保育所保育指針」で定められた月案や週案などの指導計画や、日報にヒヤリハットの報告書、そして保護者への連絡帳などの書きものが負担だったという。行事の製作物も加わると、勤務時間ではとても終わらず、毎日のように仕事を家に持ち帰っていた。
食物アレルギーへの対応を必要とする園児や、集団に適応しにくい園児も増えていて、保育士たちのより細やかな対応も必要になってきた。