パナマ文書がもみ消されずに公開された意味

機密文書を安全に公表するための有効モデル

パナマ文書はなぜもみ消されなかったのか?(写真:yodiyim / PIXTA)

国際調査報道ジャーナリスト連合が公開した、通称「パナマ文書」が世界を揺るがしている。今世紀最大級と言われるこの金融スキャンダルについて、作家で翻訳家の井上一馬は文書が公開に至った経緯に着目した。

歴史上最大の文書漏洩「パナマ文書」

当記事は「GQ JAPAN」(コンデナスト・ジャパン)の提供記事です

歴史上最大の文書漏洩と言われる「パナマ文書」が、2016年4月に公表されて以来、これまで日本ではイギリス領ヴァージン諸島やバミューダ諸島など、いわゆるタックスヘイヴン(租税回避地)を使って節税(税金逃れ?)を行っている一部の資産家や企業の名前が公表されて話題になっている程度だが、世界的には、アイスランドの首相がタックスヘイヴンを使った資産隠しを疑われて辞任に追い込まれ、イギリスでは、亡父の名前が文書に記されていたキャメロン首相が、欧州連合離脱か残留かを問う、今後のイギリスの命運を決めると言っても決して過言ではない重大な国民投票を前歴にして、苦境に立たされている。

その一方で、アメリカではこれまでのところ、公表された文書の中に自国の政治家や著名人の名前がほとんど含まれていなかったことから、これは主に、親しい友人の名前が記載されていたプーチン大統領のロシアや、親族の名前があがった習近平国家主席の中国、あるいは、パキスタン、イラク、ウクライナなど、政治的な腐敗に冒された国の問題であり、アメリカにとってはむしろ、もう何年も前から問題視されている、グーグルやアマゾン、あるいはアップルといった、アメリカ生まれの巨大多国籍企業によるタックスヘイヴンを使った合法的な租税回避行為のほうがはるかに大きな問題だ、という見方が強い。

が、いずれにせよ、パナマ文書の公開後フランスの経済学者トマ・ピケティ氏ら世界の経済学者355人がタックスヘイヴンの存在を終わらせるべく出した書簡の中で表明したように、「タックスヘイヴンは一部の富裕層や多国籍企業を利し、貧しい人々の犠牲の上に不平等を拡大させている」だけであり、この文書の公表によって、今後タックスヘイヴンの問題が、世界経済が全体として取り組むべき大きな課題として改めて浮かび上がってきたことは間違いないだろう。

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