「パナマ文書」が暴いた巧妙な税逃れの手口 ある米国人は143億円を国外へ飛ばした
ウィリアム・R・ポンソルトは長年の間にいくつもの事業を成功させ、何千万ドルをも稼いできた。彼はニューヨークで住宅のリノベーションを手掛け、バハマではヨットクラブを、そしてカナダでは自動車部品の会社を運営していた。数十億ドル規模のヘッジファンドさえ持っていた。
引退を間近にしたポンソルトは、オフショア金融の世界で力のあるパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」に特別な依頼をした。「自分の資金を秘密裏に海外の銀行口座に移し、その口座を使って不動産を買ったり、子どもたちにおカネを譲ったりしたいが、どうしたらいいだろうか」というものだ。
8つのペーパーカンパニー
モサック・フォンセカの弁護士は2004年にこう記している。「彼は非常に資金力のあるヘッジファンドの経営者であり、彼が何よりも望んでいるのは、個人名を明かすことなく銀行口座を開いて、最高レベルの機密性を維持することだ」。つまり、「彼は資産保護のスキームを求めているので、当社としてもそれを売り込んでいる」。
ここから両者の関係がスタートし、モサック・フォンセカは少なくとも2015年まで、8つのペーパーカンパニーと財団1つをポンソルト家のために管理していた。同社は6カ国の7つの銀行を使って、少なくとも1億3400万ドル(約143億円)を移動した。こうした資金の流れは、ポンソルトやその子どもたちとは直接は結び付けられないようになっていた。
パナマ文書として知られるモサック・フォンセカの文書には、ポンソルト家との取引や、同様の他の裕福な米国クライアントとの取引について、非常に詳細に記されている。パナマ文書は南ドイツ新聞と「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」が入手し、ニューヨーク・タイムズ紙も記録を共有した。