「パナマ文書」が暴いた巧妙な税逃れの手口 ある米国人は143億円を国外へ飛ばした
パナマ文書を見る限り、ポンソルトとその子供であるトレイシーとクリストファー以上に、モサック・フォンセカから手厚いサービスを受けていた米国人クライアントはほぼいないようだ。3人はそれぞれに秘密のメールアカウントを提供され、「父」「娘」「息子」というコードネームが付けられていた。
同社の「VIPサービス」には、パナマシティの人気フランス料理店でのランチ予約から、ポンソルトとその妻がパナマのパスポートを取得する際に例外を認めるよう政府に圧力をかけることまでが含まれていた。
80万ドルを「父」から「息子」へ送金
何年にもわたり、ポンソルトの数千万ドルものおカネが、さまざまなペーパーカンパニーに流れ込んだ。たとえば、「バルダノ・インベストメント・グループ」はスイスのベレンベルグ銀行に口座を持っている会社だった。
こうした一連の仕組みの中でも最も重要だったのが「エデンストーン財団」だ。パナマ文書に記されていた秘密のミーティングでモサック・フォンセカは、世界中の銀行口座に置かれたおカネの財団経由での受取人を、ポンソルト一家とした。
初期の依頼の中には、80万ドルを「父」から「息子」に秘密裏に送金する、というものがあった。つまり、モサック・フォンセカがクリストファー・ポンソルトのために設立したまた別のペーパーカンパニーにおカネを移すということだ。その会社の銀行口座は、アンドラとパナマにあった。
弁護士のジャック・ブルームによると、連邦法では、家族間で資金を移動できる非課税限度額は年間1万4000ドルだ。しかし、この「相続前分配」と文書に記されたポンソルト家の送金では、米国で通常課税されるであろう贈与税が支払われた証拠は文書内には見つからなかったという。ブルームは国際的な脱税に詳しく、10年以上にわたり国税庁(IRS)のコンサルタントを務めた人物だ。