パナマ文書で人為的な課税逃れは防げるか 国際的な課税制度確立を目指す動きが加速

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4月上旬、アイスランドでのデモの様子(写真:ロイター/アフロ)

4月に入り、「パナマ文書」の流出で世界中が大騒ぎとなっている。課税逃れを手助けするパナマの法律事務所の内部文書が流出し、各国の政治家や著名人や企業などの名前が「パナマ文書」の中で取り沙汰され、その波紋が広がっている。東洋経済オンラインでも「世界を揺るがしかねない『パナマ文書』の衝撃」などで報じられたところである。

政治家中心に問われる道義的責任

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今後、「パナマ文書」の影響は、どのように広がるだろうか。

まず、各国の政治家やその関係者が関与した租税回避の責任追及が本格化するだろう。すでに、アイスランドの首相が辞任に追い込まれるなど影響が出始めている。「パナマ文書」を公表している国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)とその情報提供を受けた報道機関は、ジャーナリストの視点から問題を追及している。政治家やその関係者なら、暴露された租税回避は、違法でなかったとしても、道義的責任は問われよう。そして、国民に納税をお願いする立場の政治家が、自らは(疑いも含めて)課税逃れをしているという点では、その批判を逃れられない。
 他方、民間の経済人や企業が関与した租税回避となると、話は少し違う。企業や個人が関与した租税回避は、違法でなければ責任を追及しにくい。たとえその租税回避に嫌悪感を抱いたり嫉視したりしたとしても、合法的に私的利益を追求すること自体は許される。ましてや、違法でないのに違法であるかのように報じれば、名誉毀損や損害賠償にも発展しかねないから、報じる側も慎重にならざるを得ない。

そうみれば、「パナマ文書」の影響は、ひとまず政治家やその関係者が関与した租税回避に焦点は限定されるだろう。そして、マネーロンダリングや賄賂の授受といった、「パナマ文書」を基に捜査が進んだ犯罪も順次焦点となろう。民間の個人や企業が関与した租税回避は、違法でなければ責任追及はなかなか難しいだろう。

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