実は、前掲のOECDタックスヘイブン「ブラックリスト」は、この観点から「タックスヘイブン」をあぶり出そうとしたものだった。その後、OECDには、税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラム(Global Forum on Transparency and Exchange of Information for Tax Purposes)が設置され、税務の透明性や情報交換の国際協調が促進された。このフォーラムは、日本も主導的な役割を果たしている。同フォーラムの詳しい説明は、筆者も委員を務める政府税制調査会の資料「自動的情報交換について」を参照されたい。
OECDタックスヘイブン「ブラックリスト」以降の更新された情報は、OECD“Tax Transparency 2015”に同様のリストがあり、税務の透明性や情報交換の国際協調が不備な国・地域を列挙している。さらに、今年2月に上海で開催された20カ国財務大臣・中央銀行総裁会議(G20)でのレポートには、その最新のリストが掲載されている。
最新情報に基づくと、タックスヘイブンとしてすぐに連想しそうな、バミューダ諸島、ケイマン諸島、ヴァージン諸島、マン島、香港、シンガポールは、G7諸国並みに税の透明性と情報交換に関して基準を満たす国・地域に含まれており、この観点からはこれらをタックスヘイブンと断じられない(だから、前掲の2009年版「ブラックリスト」はもう古く正確でないと記した)。ただ、パナマ等はこの基準審査の日程が未確定(で非協力的)との指摘を受けている。
タックスヘイブンが問題視される理由
もともと、OECDのタックスヘイブン「ブラックリスト」は、税の透明性と情報交換の観点から非協力的な国・地域を指していただけに、国際協調が進んだ今、この観点から「タックスヘイブン」と名指しするのは難しいだろう。とはいえ、タックスヘイブンと思しき国・地域は現にあって、そこを使って租税回避が行われている問題は厳然として存在する。ならば、どんな問題があって「タックスヘイブン」と思しき国・地域を問題視しなければならないのか。
それは、低税率・無税であることで生じる租税回避といえる。人々がイメージするタックスヘイブンはむしろこの観点である。所得税や法人税や資産課税が低税率であったり、そもそも税金を課税していない(無税)国・地域が存在するため、そこを使って人為的に、払うべき税金を払わずに済むようにしていることを問題視している。
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