痛すぎる、右派政治家の言語感覚 島田雅彦×波頭亮 日本の精神文化のゆくえ(下)

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波頭:感覚的に、そういうことを思っているのかもしれませんね。でも、国防軍や極右政策を行って日本の経済や外交がうまくいくかというと、私はうまくいかないと思います。

最大の理由は、日本の食料やエネルギー自給率が低いということ。つまり、日本は世界とうまく折り合いをつけてやっていかなければどうしようもない国なのです。

ヨーロッパは、個別の国が極右に走らないように、EUという経済圏を確立しました。EUは孤立主義を取っても何とかやっていける経済基盤を整えたのです。米国も、他国をシャットアウトしても最低限やっていくことはできるでしょう。

東アジア経済圏をある程度構築できていれば、日本も米国やEUとある程度距離を置くことを恐れずに済むのでしょうが、有力な構成国である中国、韓国とこんな関係では、東アジアをまとめるなど望むべくもありません。

したがって、いくら国防軍で強い国家をつくったとしても、孤立化して最初に音を上げざるをえないのは日本でしょうね。

憲法第9条で、国際社会でのプレゼンスを高める

島田:尖閣問題と極右勢力の台頭によって、このところ護憲は旗色がよくありません。極右は憲法改正を訴えていますが、やはり問題となるのは第9条の戦争放棄でしょう。

現行の第9条の縛りを考えれば、尖閣に自衛隊を駐留させるのはまず不可能で、中国の人民解放軍が尖閣諸島に上陸して初めて自衛隊を出動させることができます。

極右の人たちはそうした縛りを問題視しているようですが、自衛隊関係者によると、そのほうがコストが安くつくといいます。

いちばん近い沖縄の島でさえ170キロ離れている孤島に自衛隊の部隊を駐留させるには、物資の輸送を含めて莫大なコストがかかる。それよりも上陸した人民解放軍から尖閣諸島を奪還する作戦を遂行したほうが、はるかにコストがかからないというのです。

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