痛すぎる、右派政治家の言語感覚 島田雅彦×波頭亮 日本の精神文化のゆくえ(下)

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学歴社会の中国で、彼らは低学歴で、いい企業に正規採用される見込みもない。そういう人々がかなり安い日当で当局から反日デモに駆り出されているようで、駒の1つとして使われているんです。

日本もそれを笑えません。日本のネトウヨの多くも、置かれている境遇は中国と同じです。中国のように当局からお金をもらってやっているわけではないでしょうが、感情を爆発させればストレス発散になるという意味では、恵まれない彼らの精神衛生上必要なことなのかもしれません。まったく不毛だとは思いますが。

ラジカルな極右の、痛すぎる言語感覚

島田:ネトウヨに絶大な人気を誇る自民党の安倍晋三総裁ですが、波頭さんはどのように評価されていますか。

波頭:「自衛隊を国防軍に」という発言には正直言って驚きました。世の中の右傾化が進んでいるとはいえ、自衛隊を国際協力隊に改変したらどうかという意見もあるなかで、一気に国防軍という単語を持ち出す言語感覚は理解できない。

近隣諸国と問題を抱えているこの状況で、政治家が発するべき言葉ではないと思います。

もともと尖閣諸島の問題は、日中共に譲れないところがあるから事実上の棚上げにしておこうということで両国とも大人の外交をしてきたわけです。それを石原氏が「尖閣買収」とぶち上げ、それに引きずられる形で政府が購入することになった。

その結果、中国で大規模な反日デモが発生し、日本企業が襲われたり、日中間の貿易がストップして、2012年7月~9月のGDPは、年率換算で3.6%という大きなマイナスを記録しました。

この経済的逸失を考えれば、中小企業の倒産や解雇、それによる自殺の増加など、場合によっては尖閣で軍事的衝突が起きる以上のダメージをもたらしたと思います。そのような状況に配慮できない政治家は、党を率いる、あるいは国を率いるリーダーたる資格はないと思います。

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