痛すぎる、右派政治家の言語感覚

島田雅彦×波頭亮 日本の精神文化のゆくえ(下)

島田:私も同感です。この発言は、非常に無神経なものでした。一方で、インフレターゲットや日銀の無制限金融緩和といった経済政策についても疑問の声が上がっていますが。

波頭:経済政策については、私は多少評価しているところもあるんですよ。日銀法改正、無制限の金融緩和というアナウンスによって、円安が進み、株価も上昇しました。

私自身は経済政策に関してはリフレ派ではないのですが、このアナウンスは結果として、尖閣をめぐる石原氏の軽率な言動で失った経済的価値を回復するぐらいのインパクトはあったかもしれません。

また無制限の金融緩和は、すでに米国やEUでも行われています。昔ながらの財政規律重視派は、ハイパーインフレを恐れて批判していますが、金融システムのコントローラビリティが上がった現在、無制限金融緩和といっても一気にハイパーインフレになる心配はないという考え方も否定できません。

度が過ぎると、放漫財政になりギリシャの二の舞いを演じるというリスクはあるものの、差し迫った凍死を回避するための1つの方法論として、それなりの有効性はあると考えています。ですから、「奇妙な経済政策」と批判されていますが、私はそれなりに評価しています。

島田:『悪貨』(講談社)という本を書いた者としては、円高・デフレ是正するなら「輪転機を回して日本円を刷ればいいんじゃないの」と思うところもあるのですが、一時的には効果があっても、その先のことを考えるとそう簡単に言うこともできない。

ジリ貧のドルやユーロに代わる資金の逃避先ということで円高になっているとするなら、その日本円を無理やり円安方向に動かすと、いよいよ世界通貨危機が本格的に始まるのではないか。この政治状況で通貨危機が発生した場合、いちばん困るのは日本でしょう。

もし仮に、新しい世界通貨ができるとして、その割り振りは軍事力や食料自給率、債務額など、国力を指標化して行われると思うのですが、それでいくと日本はかなり低い評価になるのではないか。

そうなると、軍事力も含めて日本を強い国家にしていかなければならないという極右の主張が支持されるムードになってきます。極右が台頭する背景には、有権者がこうした危機を何となく感じているからと考えるのはうがち過ぎでしょうか。

次ページたとえ国防軍で強い国家ができたとしても……
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