痛すぎる、右派政治家の言語感覚 島田雅彦×波頭亮 日本の精神文化のゆくえ(下)

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かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」ともてはやされ、一世を風靡した日本経済の繁栄も今は昔、この15年間、日本だけが成長から取り残されている。個別企業のプレゼンスも国際競争力も低下し、日本経済の影響力はいまや見る影もない。経済ばかりでなく政治も混迷を極めている。2009年に歴史的な政権交代が実現したが、3年間の民主党政権は、大きな失望と混乱と内外に及ぶ幾多の問題を残した。
この混迷が日本流モダニズムの限界であるとするならば、私たちは日本の文化や思想をいま一度検証してみることが必要だろう。日本人の精神性はいかに変化していったのか。今回は、作家の島田雅彦氏とともに考えてみることにしたい。
なお、この対談は総選挙告示前に行われた。その後、日本国民が下した選択と照らしあわせて読んでいただくと、日本人の精神性が向かっている方向がより明確に見えてくるのではないだろうか。

※対談(上)はこちら

感情的ナショナリズムに走るのは誰か?

島田:もう10年くらい前に『年収300万円時代を生き抜く経済学』(森永卓郎著、光文社)という本が話題になりましたが、いまや年収300万円というのは勝ち組とは言わないまでも、そこそこがんばっている人たちです。

当時、小沢一郎氏が「年収100万円時代になったら革命が起きるだろう」と言っていたのを覚えていますが、まさか本当に年収100万円時代なんてくるはずはないと考えていました。

ところが、正規雇用から漏れて日雇い派遣やフリーターとして生活している人々は、最低賃金も上がらないなか、本当に年収100万円という人が増えているのが現実です。でも、一向に革命が起きる気配はありません。

自分が若者の側にいると思っているわけではありませんが、まだ政党政治に多少の信頼があるならば、選挙に行って投票行動を起こすべきだと思います。しかし、投票行動そのものが無駄なんだという徹底したあきらめが、若い世代から感じられますね。

波頭:こんな表現が成立するのかどうかわかりませんが、若い人たちから政治や政策に対する積極的なニヒリズムを感じます。あんなものに関与すること自体がばからしいと、あきらめというより能動的にばかにしている感じがします。

島田さんは、大学で若い人たちと接する機会も多いと思いますが、小市民的な満足ではなく、大局的な思索をめぐらせている若者はいくらかでもいますか。

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