でも、教科書がないんですよ。心理学をやればいいという人もいますが、ちょっと心理学を学んで、教科書に書いてあることを言われたところで、社員は動かないですよね。だから、どうやって社員を動かしていくかということを常々考えて、心からのメッセージをポンと出せるかどうか。私は、つねに「人事は言葉の魔術師たれ」と言っています。
脳科学と動物学から人事を考える
――米国では人事をサイエンスとしてとらえていると聞きました。日本にもそういったアプローチはありますか?
日本ではまだ勉強が足りないですね。私はいま、脳科学と動物学を勉強しています。心理学は、まだ科学になりきれていないと個人的に思っていますが、脳科学は明らかに科学なのです。
人間はどういうふうに考えるか、人間の学びというのはどうやって起こるのか、などを科学的に解明しつつあります。まだ始まったばかりですが、この分野は面白いですよ。
私は人事担当者ならこういった勉強もしないといけないと思っています。もちろん、それぞれの関心によって哲学をやっても、歴史をやってもいい。
私が追いかけているひとつが脳科学で、脳のことが書いてある本が出ると、何が正しいのか、何ができるのかを考えながら、一生懸命読んでいます。
動物学の本を読んでいるのもそうです。人間は動物ですから、動物がやらないことをやらせると、やる気がなくなるのではないかと思っています。
だから、本人の意に沿わない単身赴任はやめろと言ったわけです。「単身赴任しているネコは見たことない」と冗談でよく言うのですが、動物がやらないことは、あまりやらないほうがいい。それは人のやる気という観点からしたときに、あまり良くないんじゃないかと思えるからです。
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