ところが、英国のEU離脱でそれは破綻した。彼らは、投票結果までコントロールできると勘違いしていたのである。まさに、コントロールの誤謬である。離脱の結果は解釈で逃げ切りようがなく、不都合な事実に直面することになった。
まず、ヘリコプターマネーなどあり得るはずがないのに、再びなぜか盛り上がった。意図的にガセネタを出して、トレードの機会を作ったにしては、多くの関係者が真剣に議論しすぎていた。さらに、安倍政権にすら投機家は裏切られた。しかし、考えてみれば、選挙が終わってから対策を決めるのに、わざわざ大盤振る舞いをする必要はまったくないのである。やるのなら次の選挙前までとっておけばよいのである。
当局を「期待のわな」で追い詰めたつもり
さらに、安倍政権がモダンなところは、旧来の自民党と違って、組織票のために古い関係者、特定の利益団体に利益供与するのでは、選挙に勝てず、浮動票層を取り込むために、幅広い減税が効果的であることをよく知っていることだ。正真正銘のポピュリストなのであり、その局面は消費税引き上げ中止で終了したのである。そんなこともわからないとは、市場関係者は欲望で目がくらんでいるとしか思えない。
そして、今回も同じである。中央銀行は株式市場のために政策を打つのではない。投資家、ましてや投機家のために政策をやるつもりは微塵もない。実体経済のために政策はあるのである。実体経済からは、緩和方向に行く理由がなく、したがって、投機家たちは再び不都合な事実に直面することになろう。
もう少し賢い市場関係者達は、確信犯的に不都合な事実をねじ曲げ、政権や中央銀行を追い込もうとしたと言えるかもしれない。政策期待で為替と株価を動かし、政策が裏切れば、市場が混乱し、責められるのは政権、中央銀行だぞ、という脅しで追い込んだとも解釈できる。政策当局を期待のわなで追い詰めたつもりかもしれない。しかし、わなに陥ったのは、わなを仕掛けて安心し、コントロールの誤謬に陥った彼らのほうなのである。
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