政策担当者の意向は当然である。もともと英国のEU 離脱がなければ、米国は利上げ、日本は追加緩和なしであったわけだから、6月の混乱が収まり、株価も米国は高値更新、日本も回復であるから、まったく問題ない。そもそも、株価のために金融政策は行わないから、大混乱ともなれば米国利上げは昨年9月のように見送るので、様子見となるが、その必要はなくなった。為替については、ポンドはともかく、他の通貨は平常に戻った、ドル円はむしろ円安になったから、これもまったく問題ない。
そして、金融市場の混乱さえ収まれば、米国の経済は極めて順調。雇用統計も5月のデータはノイズに近く、6月は驚くほどの雇用増加であったから、実体経済からも利上げを見送る理由がなくなった。そもそも、利上げは引き締めではなく、異常な低金利の正常化であるから、よっぽどの心配がない限り正常化する、つまり利上げするのである。
日本も状況は変わっていない。インフレ率2%の物価目標が達成できないのは明らかだが、それはこの1年(2年や3年いや20年という意見もある)ずっと明らかなので、今に始まったことではない。展望レポートが出ようが、日銀自らの言論の整合性を取るために金融政策を行うのではなく、日本経済のために行うのであるから(本コラム2015年10月29日付けの記事を参照)、それは理由にならない。
確信犯的といえる「コントロールの誤謬」
ましてや混乱の震源地の欧州も、経済への影響は短期の混乱が収まれば、長期的な実体経済への影響が懸念されるということなので、普通の金融政策としてじっくり構えることになる。
このようにみると、なぜ市場関係者が絶対に緩和がある(日銀、ECB)、利上げはない、示唆もしない(米国)、と断言できるのか不思議だ。しかし、その理由はいつも通り、単純なのである。
彼らは、願望が常に実現すると勘違いしているのであり、「コントロールの誤謬」に陥っているのだ。コントロールの誤謬とは、自分ではコントロールできないものがコントロールできると思ってしまう誤りである。市場関係者は確信犯的にこの誤謬に陥ってきた。
株価が上がればよい、と多くの投機家が思っているときは、良好な景気指標が出れば、素直に上げる。悪い雇用統計の数字が出ると、利上げが遠のいたという解釈で金融緩和継続から株価にはプラスとして、また上げる。そろそろ売りたいと思ったら、好決算で好材料出尽くしということにする。つまり、自分たちの都合の良い解釈で、不都合な真実は都合の良い解釈にすり替えて、市場を思い通りに動かしてきたのである。市場は買えば上がる、という自己実現であるから、それですべてうまくいく。都合の良いようにコントロールできる、という誤謬に陥っているのである。
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