なぜ市場関係者の「期待」は裏切られるのか 投機家たちは不都合な真実に直面するだろう

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いつもなら、日銀の追加緩和は100%ない、と言いたいところだが、今回はある可能性はある。するべきではないが、追加緩和はあり得る。ただし、市場関係者が期待している、あるいはマーケットが織り込んでいると言われる確率よりもはるかに低いだろう。

理由は明確だ。現状、必要ないからである。だから、黒田氏は追加緩和しない。それだけのことだ。

そもそも、なぜ追加緩和期待が高まったか。

それは英国のEU離脱である。これにより急激な円高が進み、株式市場も大混乱に陥った。だから米国は6月に利上げしなかったのであり、その判断は正しかった。一方、市場関係者は、世界中がこの危機を救うためにすべての政策を打つと考えた。いや「期待した」。年内に米国の利上げはない。それどころか2017年もない、というエコノミストまで現れた。日本はもちろん為替に敏感だから1ドル100円突破が視野に入り、為替介入だ、いや介入は米国がイヤがっている、それなら大規模金融緩和しかない。こうなった。もちろん、欧州は震源地だからとことん緩和に決まっている、ということである。

ECBは金利据え置きを決定

さて、欧州はどうなったか。7月21日、ECB(欧州中央銀行)が金利据え置きを決定し、ドラギ総裁は記者会見で9月の緩和を匂わせなかった。これを受けてユーロは対ドルで上昇した。何らかの金融緩和をする、あるいは9月にすることを示唆するはずだ、という市場関係者の期待は裏切られた。

続いて、黒田日銀総裁がヘリコプターマネーはないと明言した、と伝わった。これで為替は円高に少し戻した。さらに、安倍政権の大規模財政出動が、3兆円規模と伝わると、不満の声が出て、規模を拡大して6兆円規模になったと思いきや、それは今後数年のものを合わせてであり、本年度は真水で1兆円程度と日経新聞が報じると一気に円高が進み、7月26日の夜には1ドル104円を割る勢いとなった。

このように、市場関係者のすべての期待は、日米欧のすべての中央銀行に裏切られようとしている。その気配がある。だから、日米ともに、緩和方向ではなく、市場の「期待」と反対になる可能性が高いと考えられるのである。

市場の期待と政策担当者の意向とかけ離れてきたのはなぜだろうか。もちろん、それは市場関係者が間違っているからである。間違っているというより、勝手に願望を募らせ「期待」とし、マーケットの期待を織り込む、と市場用語風に言って駄々をこねているだけだからである。

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