無印良品が中国人の若者を魅了する深い理由 若者が抱える矛盾を解消できる「価値」を提供
周りの俗人に理解してもらわなくても結構だと思う高いプライドがある一方、世の中の誰かに、「センスが良い」「個性があるファッションだ」「先端的なライフスタイルを持っているね」「あなたの寂しさも美しい」と、褒めて欲しいと思っている矛盾した存在だ。
無印良品は、この矛盾を満たしてくれる。シンプルなデザイン、ナチュラルな家具、トーンのそろった色、アイデアあふれる雑貨、簡単だけどしゃれている食事……店舗に入ると、ココロの底から求めていた感覚が満たされるのだ。
カスタマー・エクスペリエンス(経験価値)とは、製品やサービスそのものの持つ物質的な価値ではなく、その利用を通じて得られる経験、気分、雰囲気、感動、満足感といった感覚的な価値のことである。無印良品は、中国の若者に彼らが求めていた経験価値を提供できたため、大人気となったのである。一昔前だったら、中国消費者には品質が良いものを提供するだけで勝てたかもしれなかったが、現在は違う。ますます多くの人は、カスタマー・エクスペリエンスを求めるようになってきた。
消費者ニーズを満たす企業の条件
「文青」「小清新」も、もともと大都市にいる若者のマイナーグループだったが、現在どんどん全国へ拡大している。年代もそうだ。インタビューした二級都市の40代男性も、「周りのダサい同年代のおじさんと違って、僕は無印良品が好きなので別格だ」と自慢した。つまり、必ずしも「一人」「悲しい美しさ」ではなく、より先進国に近い美意識、洗練されたライフスタイル、自然に近い暮らし、個性をモノを通じて表現、おしゃれな雑貨などモノによる幸福感を商品やブランドに求めている。
日本企業の製品は、他国よりこうした消費者ニーズを満たす可能性が大きいと思う。日本の商品は、欧米の商品より親和性や品質が優れているだけでなく、「ディテールにこだわり」「個性あり」「一人だけど悲しくない」「ゆっくりとした暮らし」「幸せになる雑貨」「日常生活における自然な美しさ」というイメージがあるため、「文青」「小清新」のニーズにぴったりだからだ。
どのようにこの優位さを活かし、若者にカスタマー・エクスペリエンスを提供していくのかは各企業の腕の見せどころになる。ただし最後に、日本国内との激しい価格差を避ける必要があることを強調したい。何でも瞬時に調べられる時代では、激しい価格差は「だましている」と思われる。
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