無印良品が中国人の若者を魅了する深い理由

若者が抱える矛盾を解消できる「価値」を提供

長い間、中国社会は貧困状況に陥っていた。1990年の一人当たりの実質GDPは、日本の約3万米ドルに対し、中国はわずか1516米ドルだった。2014年になると、日本は3万5635米ドルで中国は1万2599米ドルと8.3倍も増えた(世界銀行)。つまり、現在の50代以上と80後(80年代生まれ)、90後(90年代生まれ)の生活環境は、雲泥の差がある。

1950年代から90年代まで、中国は配給制だった。米から布まで、すべて配給券で交換した。衣料も足りなかったので、ファッションを楽しむどころか、衣服が足りるかどうかだけで精一杯だった。そして、当時は衣服の色も黒・グレー・ネイビー等の暗色がほとんどだった。赤など明色の衣料を引き換えられたら、春節などビッグイベントのためにとっておく貴重品だった。

意識の面でも「外見を重視する人=個性を重視する人=集団利益を最優先しない人=批判されるべき人」、「女性の美しさは素朴さにある」といった価値観があった。ほとんどの人はファッション、ドレスコードなどについて知識がなく、ファッションを重視することに否定的であった。

中年層には貧しい時代を連想させる

したがって、今の中年層以上にとって、無印良品の特徴である単色・シンプルは、どうしても貧しい青春時代の暗い印象と重なってしまう。現在経済力をつけた彼らにとって魅力的なのは、若い頃に着られなかったカラフルな服、夢にも出なかった豪華な内装、春節しか食べられなかった肉料理……のような、鮮やかで盛り沢山なイベント感があるものなのだ。

一方、彼らの子供達である80後、90後は、経済的に恵まれた幸運世代だ。一人っ子政策により「小皇帝」となり、祖父母を含めた6人は「スポンサー」。おカネだけでなく、「カラフルさ」に欠けていた親は、自分の暗くて寂しい青春を埋め合うようと、できるだけ子供に赤・青・黄などの服を着させた。そして、飢饉時代も体験した祖父母も、愛する孫に、自分たちにとって貴重品であった、いちばんのご馳走であるお肉・脂っこい食事・砂糖が入った甘い飲料をいっぱい摂取させた。

しかし、彼らの子供・孫は、その価値観をそのまま受け入れたのだろうか。

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