かつて銀行の一般職といえば、結婚・出産までの「腰掛け」というイメージが強かった。
りそな銀行の福生支店で個人営業のマネージャーを務める高仲麻美さん(34歳)も、1999年に一般職としてあさひ銀行に入行したときは、「25~26歳になったら、結婚して辞めるんだろうな、と思っていました」と明かす。
それが現在は、投資信託の販売から、住宅ローンの設計、はたまた相続の相談まで、個人顧客のおカネにまつわるあらゆる相談に乗りながら、8人の部下の育成や数字目標にも責任を負う。一方、家庭では、3歳の男児の母だ。
今では、息子にも、「ママ、お仕事好きだよねぇ」と面と向かって言われるほどの仕事人間だ。
いったい何が、「腰掛けOL」を「仕事重視のワーキングマザー」に変えたのか?
高仲さんのキャリア意識の変容は、会社再生の軌跡と重なる。99年に新卒で入ったあさひ銀行(当時)は、バブル時代の拡大路線が裏目に出て、多額の不良債権を抱えていた。そのため、社内の雰囲気は暗く、行員のモチベーションも総じて低かった。
キャリアの転機は入行3年目の2001年、営業課の若手を取りまとめるチームリーダーになったことだ。
「でも、抜擢でも何でもないんです。当時の女性行員は、どうせ肩書だけもらっても面倒な仕事が増えるだけだと、リーダーになりたがらない人が多かった。先輩に『あなた、やりなさいよ』と言われて、引き受けただけ」
女性行員が出世したがらなかったのも無理はない。当時の銀行は、完全な男社会。法人部門で成績が上がらなかった男性マネージャーが、個人営業のマネージャーに回され、ろくに個人部門の知識もない上司が下に仕事を押し付ける、なんてことが普通にあった。
そんなマネージャーの下でリーダーになっても、まさに負担が増すだけ。つまり、高仲さんは、誰もやりたがらない仕事を押し付けられたのだ。
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