この影響は、バランスシートにも表れています(下記)。同年同期の「純資産の部」にある「利益剰余金」を見ますと、△5869億円と大きなマイナスになっています。
ただ、ここで注意しなければならないのは、「純資産合計」です。平成24年3月末の時点では8124億円でしたが、同年9月末には1兆5113億円まで急増しています。具体的には、「資本金」と「資本剰余金」が合計で約1兆円も増えているのです。この増加分は、政府が東電に注入した資金額です。
つまり、もし政府が東電に約1兆円の増資をしなかったら、東電の純資産は5000億円程度まで減少していたということになります。そして、東電は営業損失が出続けている状態ですから、このままでは債務超過に陥る可能性があると言えるのです。
このように、現在の東電は営業損益段階でも、純利益段階でも、損失が出続けているという状況に陥っています。言い方を変えますと、東電は国民負担によって何とか延命しているというのが実情なのです。
さらに東電は、今後長い年月をかけて原発事故の賠償をしていかなければなりません。そのため、図表2の損益計算書の「特別損失」の中に「原子力損害賠償費」が計上されています。平成23年9月期には8909億円、平成24年同期には2358億円とあります。
しかし、ここでも注意が必要です。特別利益に計上される、賠償費を賄うための「原子力損害賠償」の交付金は、原発を持たない沖縄電力を除いた電力会社によって賄われています。つまり、全国で電気を使わない家庭や企業はありませんから、結局は、これも国民負担なのです。さらに東電は、当初想定していた5兆円の賠償額が、今後は10兆円規模にまで増える可能性があるとして、新政権にも追加支援を求めていくと発言しました。
以上のことから判断すると、東電は一度破綻させるほうが今後の経営もうまくいき、国民も納得するのではないかと考えます。(以下、下に続く)
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