「原発事故収束には国の負担が必要だ」 東京電力・廣瀬社長に聞く
福島第一原発事故を起こして公的管理下にある東京電力は、賠償、除染、廃炉に伴う膨大な負担を背負い、先の見えない事故に対する新たな支援の枠組みを国に求めている。東電はこれからどのような道を模索しようとしているのか、原発に対して今どう考えているのか。廣瀬直己社長に聞いた。
復興本社の目的は作業のスピードアップ
――東京電力にとって目下最大の課題は福島第一原子力発電所の事故収束と賠償、除染の取り組みだ。しかし現状、地元の住民や自治体からは賠償、除染の遅れを批判する声が多い。東電は来年1月1日付で「福島復興本社」を「Jヴィレッジ」(福島県双葉郡楢葉町)内に設立し、福島県にあるすべての事業所の復興関連業務を統括し、賠償、除染などを加速する意向だが、本当に効果が見込めるのか。
(賠償、除染の遅れについては)被災者の方々固有の状況に1つひとつ応えていかなければならないということに加え、当初は今年4月ごろから始めたいと考えていた財物や不動産(土地・建物)の賠償がなかなか進んでいないということがある。これは帰宅困難地域の線引きとリンクするもので、その線引きに対していろいろ意見が出て、作業が進んでいない。また、名義変更などの登記をしていない方も多く、確認作業に手間がかかっている。
福島復興本社の設立に伴い、多くの被災者の方々のそばで書類確認など個別の事情の確認を行うことによって、作業がかなりスピードアップできるのではないかと思っている。代表執行役の副社長がトップとなって、賠償などに関する権限のかなりが東京本社から移される。
――被災者への賠償に関しては、民法で損害賠償を請求する権利が3年で消滅すると定められており、賠償作業が長期化する中で、賠償の時効対策をどうするかも議論となっている。東電が裁判所に主張しない限り、時効消滅は適用されないが、東電自身はどういう考えなのか。
現状は賠償開始から約1年半だが、まずは賠償手続きに入っていない方々にしっかり連絡を取っていく。われわれは賠償の責任から逃れるというつもりはまったくない。ただ法律なので、むやみに法律から外れたことをすることにも問題がある。時効についてはいつから3年かという解釈もさまざまあるが、現状は何とか3年以内に手続きを終える方向で努力していくということだ。
――福島第一原発は1~4号機の廃炉が決まっているが、停止中である5、6号機、第二原発1~4号機の対応は決まっていない。これをどうするのか。福島県民からは全体廃炉を求める声は多い。また、停止中の原発にかかる減価償却費などのコストは原価として電気料金に算定されている。
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