「原発事故収束には国の負担が必要だ」 東京電力・廣瀬社長に聞く

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事故の「不作為」を認めたというのは誤解だ

――東電は社内の「原子力改革特別タスクフォース」が10月にまとめた報告書「原子力改革の進め方」で、福島事故は事前の津波評価の時に「対処は可能だった」と自らの“不作為”を初めて認めた。訴訟や原発反対運動、プラント停止のリスクを恐れて安全対策を怠ったという内部分析を示しており、企業努力の範囲を超えた“想定外”の事故原因だったというそれまでの弁明から踏み込んだ印象を与えた。

“不作為を認めた”というのは誤解だ。「すべてが天災によるもので、打つ手はなかった」で終わっていたら、次の策は打てない。当時は打つ手はあったが、なぜそれが打てなかったのかを考えなくてはならない。“想定外”だったことに変わりはないが、これからは想定外ということがないように対策を考えていくということだ。不作為だったかどうかは裁判もやっているし、その中で明らかになっていくとは思うが、われわれとしては不作為とは考えていない。

――今後の東電の組織改革としては、現在、政府の電力システム改革専門委員会で行われている発送電分離の議論が影響してくる。専門家の中には、公的管理下にある東電を発送電分離のモデルとし、欧州では主流となっている所有権分離にまで一気に改革すべきとの意見もある。

今のシステム改革委の結論がどうなるにしろ、社内のカンパニー制を敷いて、メリットを出すようにやっていきたい。その先で法律も改正されて発送電分離になるのであれば、ホールディング制でそのための準備をしていくということだ。ネットワーク(送電網)で必要とされているのは中立性や透明性なので、それをどう担保していくかというのはこれからの議論だ。

所有権分離は法律改正が必要であり、一般担保の問題もあって金融機関も心配されるだろうから、慎重に判断していかなくてはならない。

――設備や燃料の調達に絡んで、ファミリー企業の改革をどう進めていくかも課題だ。

われわれも相当なコストダウンをしていかなくてはいけない中で、ファミリー企業からの調達も当然、対象に入ってくる。ファミリー企業のほうもスリム化していかないと厳しくなるだろうし、逆にそうすることで彼らも市場で闘うだけの力が付くはずだ。東電グループ外からの受注も可能になってくれば、それを“吉”として強い会社になっていけるだろう。

ひろせ・なおみ●1976年一橋大学卒、東京電力入社。2003年営業部長、10年常務取締役。11年3月福島原子力被災者支援対策本部副本部長。12年6月から現職。


 

中村 稔 東洋経済 編集委員
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