「原発事故収束には国の負担が必要だ」 東京電力・廣瀬社長に聞く
――負担をきっちり決めて清算し、新生・東電としての再出発を図るために、会社更生法などの法的整理を申請することを選択肢として考えているか。
法的整理をすれば、株主と金融機関の責任がはっきりするというのはわかる。ただ、それですべてがスッキリ行くかは疑問だ。われわれは福島の方々への賠償や除染、廃炉について責任を持ってやるが、一方で、青天井でわからない債務を背負ったまま自由化された市場で電気事業を営むのは無理だと主張している。法的整理をして、被災者への賠償、除染などの残った負担を誰が背負っていくのか、国が青天井で負担するのか、最終的に誰がどう将来にわたって負担していくかの議論は煮詰まっていない。
米国にはプライス・アンダーソン法(原子力事故の際の事業者の責任は約102億ドルを上限と規定した法律)のような規定があるが、日本にはなく、負担の上限が見えないことが問題だ。
来期の黒字化は柏崎刈羽次第
――総合特別事業計画では、柏崎刈羽原発の13年4月からの順次稼働を前提としているが、再稼働のための新たな安全基準の法制化は13年7月からであり、新潟県知事は「原発事故の徹底検証が先決」として再稼働の議論すらできないとしている。今年7月からの電気料金値上げ幅も査定の結果、最終的に圧縮されたことで、13年度収支黒字化の前提はほぼ崩れた。金融機関の反応も焦点になっている。
「再生への経営方針」に対して金融機関からは特にネガティブな反応はなく、むしろわれわれの主張どおりに負担がはっきりすれば金融機関にとっても安心材料になると思われる。一方で、やや債権放棄を惹起するような内容や、ホールディング(持ち株会社)制を敷いた後の一般担保の内容がどうなるのか、債権債務は誰が引き継ぐのかについて、いらぬ心配をさせてしまったことは反省点としてある。
13年度の黒字化計画については、柏崎刈羽原発の再稼働と関係が深いが、来年4月からの再稼働について厳しい状況とはいえ、まだあきらめたわけではない。われわれの事故調査結果や改革プランを示していくことによって、1日でも早く新潟県の皆さんに納得していただけるようにしたいと考えている。柏崎刈羽原発が永久に稼働不可能になっているわけではなく、手続き上のプロセスで遅れる可能性があるということであり、遅れる期間の長さによって対応の仕方も変わってくる。今はまだ対応を決定する時期ではないと考えている。
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