国民負担で延命している東京電力(上) 政府はなぜ破綻させないのか

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前回、シャープの財務分析の際にもご説明しましたが、このような危機の際には、とにかく手元流動性(現預金や、すぐに現金化できる資産、借入枠など)を確保することが財務の鉄則です。

なぜなら、会社はお金が無くなったときに潰れるからです。実際に経営が悪化しますと、お金を借りることも難しくなりますから、自社でコントロールできる手元流動性をどれだけ確保するかが会社の命運を握ることになるのです。

そして、東電は震災からわずか20日間で、2兆円近くのお金を借りています。これは、財務的には非常に素晴らしい対応です。

ただ、見事なのはこれだけではありません。「負債の部」の中の「長期借入金」を見てください。(こちらも、通常の貸借対照表とは、「流動」と「固定」が逆になっています。)平成22年3月末に1兆6143億円ありましたが、平成23年3月末には3兆4237億円まで急増しています。増加分は約2兆2000億円です。

つまり、先ほど「現金及び預金」が約2兆円増えたと言いましたが、これは長期借入金で借りたということなのです。短期で借り入れずに、長期で借りたほうが当然財務安定性は増します。震災直後の非常に厳しい状況ですから、銀行は貸したとしても短期で貸したかったと思いますが、そこを長期で借りた東電はすごいと考えます。ひょっとしたら政治的な圧力が銀行にかかった可能性もあると、私は見ています。

 東電の財務分析をしていくと、面白い点が二つあります。一つは、東電は元々、自己資本比率(純資産÷資産)が低いという特徴があるということです。健全な状態である平成22年3月末の資産の合計は13兆2039億円、純資産の合計は2兆5164億円ですから、自己資本比率は19%となります。一般的に、固定資産を多く使う業種では20%が最低ラインですから、これは低い水準と言えます。

 二つ目は、東電は通常、現預金をあまり持っていないということです。一般的には、東電のような大企業であっても、月商の1カ月分強の現預金を持っていないと安全とは言えません。

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