「マックの厨房で死ぬ」とまで言い切る男 OB・鴨頭嘉人氏に聞く

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トイレ掃除のおばさんに、「トイレ掃除の仕事って、きっと誰かに褒められたりする機会が少ないと思いますけど、本当に素晴らしい仕事ですよね」と言うと、「そんなこと言ってもらったの、初めてです」と、涙を流したりするんです。そうすると、こっちも「出会って良かった」と思うんです。

すべての人や職業に価値があるなら、自分にも価値があると思えるようになる。「サービス業で働く人を元気づけるのは、私だ」、「この人をもっともっと輝かせるのは、私だ」って。僕はこれをやると決めた。だからマクドナルドを辞めたんです。

――思い切った決断ですね。

この「ハッピーマイレージ」を、とにかく1人でも多くの人に伝えるためどうしたらいいかと、マーケティングの専門家やコンサルタントに相談したんです。みなが共通して「この活動は素晴らしい」という。でもこの仕組みだけで人は動かない。「そんなことに命を懸けている、君のほうが面白い。人々はそのストーリーに共感を覚える、だから君が行け」と言われたんです。「ハッピーマイレージ」は起業から3年後の2013年に仕組みにして、メディアにプレスリリースするって決めています。

多くの人がどうやって儲けるのという話をするのですが、ハッピーマイレージで儲かるかどうかはどうでもいいんです。ただこの活動を知ってもらいたい、電車の中で席を譲ろうとした時に勇気がいるような歪んだ社会を、変えたいと思ったんですよ。

僕は今、リーダーシップやコミュニケーションをテーマに講演活動を年間150本ぐらいのペースでしています。多くの会社からコンサルやってください、顧問になってくださいと言われるのですがほとんどお断りしています。僕が興味あるのは、タクシー会社とか、ビルのメンテナンス会社、コンビニエンスストアとか、そういう社会的地位が低い人たちです。世の中の人は彼らに一番助けられているのに、自分たちの仕事の意味付けに気が付いていない。彼らを動かすことができたら、本当に世の中を変えることができるはずです。

25年働いて、毎日「マック、大好き」、「俺は厨房で死ぬ」と言いまくっていました。僕が退職したとき、現場から「鴨さんに引き止められたから今も続けているのに、どういうことですか」とか、「鴨さんと働きたいから入社したのに、僕の夢はどうすればいいんですか」というクレームメールがたくさん来ました。ラブレターなので、独立してつらいときがあったら見ようと思って、全部印刷してファイルに綴じてあります。でも1回も開いていないですね。毎日楽しくて、楽しくて(笑)。

(撮影:山内 信也)

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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