欧州の洪水は北半球規模の猛暑の前触れか? ユーラシア大陸東西の異常気象の共通点とは

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気象が人間に影響を与える効果に関する研究が進み、生理的側面ばかりでなく、心理的側面が国際会議でも討議されるようになってきた。これ自体は良いことだが、温暖化に伴う猛暑に人間社会がどう取り組むか討議する際、困難にも遭遇する。その国独自の問題で他国がどうこう言えない、つまり、国際的にどうしても越えられない溝がある。それはその国独自の社会制度だ。

たとえば、インドのカースト制社会を、猛暑対策のために急にどうこうすることは不可能である。酷署期の日中の気温が40℃を越えるインドの都市で、「夜間を屋外で過ごす人々の熱中症対策を何とかせよ」と外国人は発言できない。ましてや、その人々の酷署・猛暑時における心理作用の研究などは不可能であろう。

「ベッドでの熱中症」にも注目を

また、日本ばかりでなく欧米でも、高齢者の一人暮らしが増加している。熱中症は屋外だけでなく、屋内のベッドの中でも起きる。比較的短時間に、孤独死に至る危険が、屋外よりもかえって大きいのだ。

前回、日本の熱中症被害は病院に搬送されたケースだけが対象になっていると指摘したが、高齢化の進行を背景に、屋内での熱中症対策への理解も、一段と進められなければならない。

吉野 正敏 筑波大学名誉教授

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よしの まさとし

1928年生まれ。東京文理科大学大学院を修了。法政大学、筑波大学などの教授やハイデルベルク大学の客員教授を歴任。日本地理学会や気象影響利用研究会、日本沙漠学会の会長のほか、2001〜2010年には国際連合大学の上席学術顧問を務めた

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