欧州の洪水は北半球規模の猛暑の前触れか? ユーラシア大陸東西の異常気象の共通点とは
いずれにせよ、猛暑・豪雨・洪水という現象自体は同じでも、その特徴や影響は時代によって変化する、言い換えれば、水位は同じでも下流部の状況は異なることを象徴する、非常に良い写真だ。
春の終りから夏の初めにかけての洪水は、その後に来る夏の異常気象の予告でもある。前回、日本では猛暑・残暑の厳しい夏には、晩春から高温になって盛夏には干ばつと大雨や豪雨、洪水がほぼ同じ時期に起きる傾向があると説明した。欧州の北西部でも今年、似た現象が見られ始めているようだ。
昨夏の欧州は、日本をしのぐ猛暑だった
2015年の日本の猛暑がひどかったため欧州に関する報道は目立たなかったが、実は同じく非常な猛暑だった。6月30日にまず、スペインのマドリッドの気温が40℃に上昇。独仏を含めた欧州北西部の気温も7月3日に33~35℃に達した後、7月12日から16日まで連日、40~41℃を記録した。イタリアのローマでも7月12日と同16〜22日は36~38℃の暑さだった。東欧も7月16〜22日に異常な高温に見舞われ、アドリア海沿岸地方の南部からトルコにかけての地域では、同18日に40~41℃に達した。
昨年7月13日の欧州とその周辺における等温線図(気温分布図)と等圧線図(天気図)を右に示した。いずれもドイツ気象台のデータに基づいている。
この図に見られるように、40℃以上の地域がイベリア半島南部にあり、30℃の等温線は地中海の北岸地域を囲んで東西に走っている。緯度からいうと、日本で言えば青森や札幌付近に相当する。この点をまず、頭に入れていただきたい。
上下の図を重ねてみると、イギリス付近に弱い低気圧があってその中心から東西に走る前線と、等温線との関連が強いことが分かる。つまり、同じ緯度を日本付近に当てはめると、北日本が厳しい猛暑に見舞われる一方で、樺太の周辺に停滞性の前線がほぼ東西に走って異常な強雨・豪雨・雷雨などが発生している形となっている。
そして下図の左端、大西洋のアゾレス諸島付近を中心とする中緯度高気圧が、イベリア半島から地中海を覆っている。この中緯度高気圧は、日本付近では小笠原高気圧に相当する。小笠原付近に中心をもつ北太平洋高気圧だ。地球の中緯度を取り巻いて特に夏に海洋上で発達する点が非常に似ており、違いは「大西洋か太平洋か」という点だけだ。
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