フェイスブック復活の鍵を握る、女帝の素顔 ザッカーバーグの懐刀に見る、新しい女性像

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控えめにふるまいがちな女性たちを「怖れちゃダメ」と鼓舞するのも、彼女がよくやることだ。オープンで透明性の高い社会、みなが公平にシェアする世界。そんな世界観が彼女の言葉 からうかがえるのだ。

頭がよく、ファッショナブルで、落ち着いた物腰。サンドバーグの語り口には、大きな説得力がある。

停滞するフェイスブックを、躍進へと導けるか

さて、それでは実際のフェイスブックの経営で、サンドバーグはどんな戦略を打ち出しているのか。そしてその影響力はどうか。

残念ながら、その部分はそれほど明確に見えるわけではない。広告で収入を上げるビジネスを確立させたとか、昨年の年末商戦の際にウォールマートを巻き込んで大型SNS広告戦略を展開したなどのニュースは聞こえてくるが、外部に対するフェイスブックの顔はあくまでもCEOザッカーバーグの役割。サンドバーグ自身が、この巨大なコミュニティーをどこへ向かわせたいのかというビジョンはあまり聞こえてこないのだ。

ただ、サンドバーグが徹底した実務者であることは確かなようだ。彼女をたびたびリクルートしたサマーズは、「朝、その日にやることのリストに30項目が挙がっていると、シェリルは夕方にはすべてに済マークをつけている」と、あるところで語っている。

準備もタイミングも完成度も、すべてをそつなくこなす。そのうえ、真に人とのコミュニケーションを楽しむ人物だという。これは、落ち着いた実力者のたたずまいだ。

しかし一方で、フェイスブックは、昨年のIPO以降それほど輝かしい発展をしているわけではない。IPOへの期待があまりに大き過ぎたために、その後の実体は縮んでしまったようにすら見えるほどだ。

また、ユーザーデータを商売道具にするなどの批判がある中で、それをユーザーと話し合いながら解決していくといったアプローチも見えない。

パブリック・セクターでの経験を積んだサンドバーグには、実はそうしたところでこそ、これまでにないユニークな方法論を打ち出して欲しい、とも思うのだ。

まだ43歳という若さ。彼女の実力は、これからまだまだ発揮されるものと、大いに期待したい。
 

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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