サムスンを超えるIBMの人材育成 MBA派遣からNPO派遣へのシフト

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日本の新しいロールモデルとなる「新世代リーダー」。その一人が、「新世代リーダー 50人」でも取り上げた、小沼大地さんです。小沼さんは、マッキンゼーを経て、NPO法人クロスフィールズを創設。アジア新興国のNPOへ日本の大企業の社員を送り込む、「留職」プログラムを手掛けています。この連載コラムでは、新世代リーダーの小沼さんに、「留職」とニッポンについて熱く語ってもらいます。
“Corporate Service Corps (IBM版青年海外協力隊)”としてガーナで活動するIBM社員

前回の記事で書いたように、僕たちNPO法人クロスフィールズが展開する「留職」は、パナソニックやテルモ、ベネッセをはじめとする日本企業での導入が決まるなど、徐々に広がりを見せている。

新興国のNPOに企業の社員を派遣することで、社会貢献と人材育成とを実現する「留職」。このコンセプト自体は創業メンバーの原体験から生まれたものだが、すべての仕組みを独自で作り上げたわけではない。僕たちは世界中で行われていた先進的な取り組みからさまざまな要素を取り入れながら、留職のモデルを固めていったのだ。

そこで今回は、僕たちが事業モデルを固めるプロセスで出会った、海外企業によるユニークで先進的なグローバル人材育成の取り組みを紹介していきたい。

“現地人”を養成するサムスンの「地域専門家制度」

僕たちが最初に目をつけたのは、「ぶらぶら社員」と呼ばれることもあるサムスン電子の「地域専門家制度」だ。これは同社がすでに20年ほど行っている、海外の現地ニーズをつかむために各地域に特化したエキスパートを育成する人事制度だ。 

この制度を利用した赴任が決まると、社員は1年間、本業を離れて有給で派遣先を“ぶらぶら”するよう命じられる。ミッションは「その国について知り尽くして、現地人のようになる」こと。この間、会社からの指示はいっさい与えられず、自主的に活動計画を立て、語学や現地の生活・文化を学ぶための活動を行うという。いくつか伝説となっている「地域専門家」の逸話があるので、紹介したい。

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