サムスンを超えるIBMの人材育成 MBA派遣からNPO派遣へのシフト

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従来のアメリカ企業が考えていたグローバル人材とは、「アメリカ型の経営を学び、その経営手法を進出先の国にインストールして、アメリカ型の手法に基づいて現場を管理できる人材」だった。だからMBAで経営手法を学んだ人材が必要とされていた。

しかし、これからますます重要となる中国やインドをはじめとする新興国では、従来のやり方では反発があってうまくいかないことがわかってきたのだという。そこで、彼らは発想を切り替えた。彼らがいま必要としている人材とは、「アメリカ型を忘れ、現地のやり方を理解し、現地の人々と一緒に新しいやり方を考えられる人材」なのだと。

そして、そうした人材をつくるために最も近道なのが、現地社会に社員を送り込むICVという手法だったわけだ。つまり、今の時代に必要な「グローバル人材」は、先進国のMBAよりも、むしろ新興国のNPOでこそ育てられるという発想だ。

日本企業こそ、アジア新興国でのヒトづくりを!

これを聞いて、「やはりアメリカ企業は先を行っているなぁ」と考える方もいるかもしれない。でも、僕の目には、これまでかたくなに自国のやり方を貫いてきたアメリカ企業ですらこうした潮流に気付いて策を打ち始めていると映る。

新興国におけるビジネスが重要なのはアメリカ企業も日本企業も同じであり、そのための人材育成が求められている現状も、まったく同じだと言える。さらに、「現地社会を理解する」という行為は、アジア新興国で言えば物理的にも文化的にも距離の近い日本企業のほうが圧倒的に有利であることは明らかだ。今こそ、日本企業はどんどんアジア新興国の現場に人材を送り込むべきだと思う。

「TOEIC730点」を目指して日々語学学校で英語を学ぶことも大事かもしれない。でも、日本企業がこれから育てるべきなのは、社員の語学力だけではないはずだ。新興国の現場で課題と向き合い、現地の人たちを深く理解し、互いに尊敬し合い、彼らとともに新しい何かを生み出していくことこそ、今、日本企業に求められていることではないだろうか。そして、そうした人材を育てていけば、ニッポンの未来は切り拓かれていくと僕は本気で思っています。

日本企業の皆さん、この流れ、きっと待ったなしです!

小沼 大地 NPO法人クロスフィールズ代表理事

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こぬま だいち / Daichi Konuma

一橋大学社会学部・同大学院社会学研究科修了。青年海外協力隊(中東シリア・環境教育)に参加後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。同社では人材育成領域を専門とし、国内外の小売・製薬業界を中心とした全社改革プロジェクトなどに携わる。2011年3月、NPO法人クロスフィールズ設立のため独立。会社員時代より社会貢献活動に関心を持つ社会人向けのコミュニティCompass Pointを主宰し、これまでに800人を超す参加者を集める。世界経済会議(ダボス会議)のGlobal Shapers Community(GSC)ジャパン2011に選出される。

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