通常の授業では、生徒の知的好奇心を満たすようなものを心掛けています。筑駒に入学してきた生徒は、それまでテストで高い点をとるための受験勉強をしてきたわけです。まず、そういう考え方を変える。
どういう授業をしているかといえば、学習指導要領からさらに範囲を広げて柔軟な思考方法を養うような「拡充型」教育をしています。カリキュラムを先取りして知識を体系的に勉強していく「先取り型」の教育はあえてしないようにしています。ですから、授業で使う教材もすべて担当教員の手作りです。
筑駒の黒板は特注サイズ
――それでも高い合格実績の秘訣は?
もちろん、生徒の地力の高さというのもあると思いますが、筑駒の創造力を養うような教育を6年間してきた結果だと思います。
例えば、数学の授業では1つの公式をいろんな角度から生徒が検証します。ただ単に公式を教えただけで終わり、ということはありません。筑駒生にかかれば三平方の定理ですら証明方法は無数に生まれてきます。それを生徒が黒板の前に出てきて、自分の考えた証明をみんなの前で解説する。他の生徒もそれを見て刺激を受けます。時には、先生も思いもつかない方法で証明する生徒もいます。
いわゆる生徒と先生の双方が「面白い!」と感じるような“実験授業”的な内容が多いですね。みんなが寄ってたかって黒板の前に出てくるものだから、筑駒の黒板は特注サイズの大きさなんです。
受験勉強3カ月で東大に!
――大学の合格実績とは直結しない授業内容なら、いつ受験勉強をするのでしょうか。東大の合格者数は現役で67名、1学年が約160名であることからすると極めて高い実績です。
受験勉強らしい学習はそれほどしていません。高校3年生は11月の文化祭まで主役として参加していますから、受験勉強を始めるのはそれが終わってからです。だから、実際に本気で打ち込むのは3~4カ月くらいの間となります。それでも結果を残せるようなポテンシャルはすでに培われています。それまでは、生徒の自主性に任せ、知的好奇心の満たされるままに勉強すればいいと思います。
高い合格実績ばかり注目されますが、大学受験に特化した進学指導は一切行いません。生徒が受験したい学校を受験すればいいし、その結果は自分で引き受ける。そういう生徒を育てることができるようにしています。受験が終わった3月に生徒から結果の報告があって、担任が進学実績をまとめているのが現状です。
筑駒はいわゆる“受験校”ではありません。理系・文系の区別もありませんし、成績順にクラスを分けることもしません。クラス替えのポイントは、音楽祭でのピアノ伴奏と、指揮ができる生徒がうまく散らばるようにしていることくらいですね。