酒は大人の教養である―その4. ワイン前編
個人的な経験で恐縮ですが、わたしが宣伝会議のコピーライター養成講座に通っていた1980年前後には、ワインはまだ日本人にとって、海外経験のある一部の裕福な人たちが嗜む酒。
講師のどなたかが、「日本にも、もっとワインを普及させたくて、(企画に)のってくれるよう、あるメーカーに働きかけているところなんだよ」と話していたのを覚えています。
それから30年。あれよあれよという間に、ワインは日本全国、津々浦々にまで広まりました。
数年前の帰省時に(私の地元は和歌山県で、ぎりぎり「市」にとどまっていられる人口をなんとかキープしていることろです)、弟から、「姉ちゃん酒好きだから」と、土産にボルドーの赤、しかもフルボディヴィンテージものを渡されたときは、ほんとうに驚きました。
ただ、急速に広まったせいでしょうか?「ワインって、なんだかよくわからなくて」という方が、Hollyに来店されるお客さまの、特に、若い世代の方に多くいらっしゃいます。
さらに、いまは、輸入業者のみならず、さまざまな企業が、こぞってニューワールドのワインの輸入を手がけるようになっています。
アメリカ、オーストラリアはすでに古参の域、チリやアルゼンチン、南アフリカなどのワインが、手頃な価格とそれなりの品質で、酒屋や、低~中堅どころの価格帯の飲食店に並んでいるのを見るのも、珍しいことではありません。
ただ、どの分野でもそうですが、そのときの表面的な流行から入ってしまうと、いつまでたっても本質にたどりつくことはできません。
ニューワールドを含めた、ワインの世界を楽しむには、まず旧世界を知ることから、というわけで、ワイン前編では、いまなお世界のワインを代表するフランスワインとそのワイン文化について、お話ししていきます。
ワインは食中酒。基本は、食事とともに楽しむもの。
1986年から7年間、毎日新聞のパリ特派員をされていた西川恵氏の『エリゼ宮の食卓』は、氏の在任中に、フランスの大統領府であるエリゼ宮で、各国の君主・首脳を招いて開かれた、饗宴のメニュー、特に料理とワインの大統領における選択を、当時のフランス外交と重ねて読み解いた一冊。
国際関係に興味のある人のみならず、歴史好き、そしてワイン好き必読の書です。
饗宴の料理とワインはすべて大統領が直接決定し、その候補として、料理長がランク別(相手によってランクを変える)に3タイプの組み合わせを提案。
……というシステムも興味深いところですが、産地とランク付け、代表的な銘柄などが、料理の相性と共に詳細に書かれていますので、フランスワインの教科書としてもおすすめです。
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