「IT中毒」が創造力を奪う ITのプロが警告する、日本企業の新たな病(上)

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インターネットの活用による情報の入手や調査、メールでのコミュニケーション、表計算やプレゼンテーションソフトを駆使した資料の作成やデータの分析――。今やビジネスの現場にITは絶対に欠かせない。主要企業の多くでは、パソコンや携帯電話(スマートフォン)を1人1台に割り当て、最近では個人や組織でタブレット端末を導入して仕事に活用する例も珍しくなくなってきた。
ITは確かに仕事の生産性や効率性を上げている。だが、「今のビジネスシーンにおいて、実はデメリットも生じている」と警鐘を鳴らすのが、東京・恵比寿に本拠を置くドリーム・アーツの山本孝昭社長だ。遠藤功氏との共著による「『IT断食』のすすめ」(日経プレミアシリーズ、2011年)の著者でもある山本氏は、「ITによって時間と創造力が奪われ、無責任体質が組織にはびこっている」と指摘する。
一方、ドリーム・アーツは、企業向けのコミュニケーションや情報共有のパッケージソフトウエアをつくり、日本航空(JAL)や全日空(ANA)、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、ファーストリテイリング(ユニクロ)などに納入。マイクロソフトやオラクル、SAPなどと競合する、れっきとしたIT企業である。山本氏自身、インテルジャパンに身を置くなど、ITの世界で生きてきた人物だ。ITの導入を促進する“張本人”が、なぜ、いま「ITを断て」と論じるのか。

 

いま個人ではなく、組織が冒されている「IT中毒」が大きな問題です。著書でも「本当は恐ろしい職場のIT」と書いています。ところがタチの悪いことに、そのことについて、あまりにも理解がされていない。深刻ですよ。

溢れかえるメールや共有ファイル

――何が深刻なんでしょうか。

まず、人間の処理能力を大幅に超えた情報とコミュニケーションに追いまくられ、洪水状態にあります。職場のパソコン画面を思い浮かべてください。処理しきれないほどのメールや共有ファイルであふれていませんか?

送り手からすれば、あまりにも低コストで手軽なために、深く考えないで「とりあえず」と必要のないメールまでも気軽に送信してしまっている。受け手から見ると、膨大なメールが届き、すべてを確認するのに大変な手間がかかる。何のアクションも必要のない「CC」で届く参考情報も少なくありません。CCメールは、責任回避の道具にもなっています。

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