「IT中毒」が創造力を奪う ITのプロが警告する、日本企業の新たな病(上)

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コピペで内容の薄い資料が濫造される

――具体的には?

インターネットを検索すれば、誰かがどこかで行った調査結果は容易に手に入ります。表計算ソフトやプレゼンテーションソフトが一般的になったおかげで、特別な知識や技術がなくても、見栄えのいい資料を簡単につくれるようになりました。

そのせいで、口頭で伝えれば1分ですむ内容が、膨大な資料に加工されて「情報共有」の名目で拡散されるようになってしまいました。コピペ(コピー&ペースト)で安易に装飾された内容の薄い資料がたくさん濫造されて、それがさらにコピーを生む状態です。結局、自分の考えがなくなってしまう。

――創造力が欠如してしまうワケですね。

調査という行為も簡単になりました。表計算ソフトでシートをつくってメールで回せばいい。結果、やたらと本社が現場に調査を依頼するようになる。でも、そこからさしたる経営プランが出てきてもいない。誰も見るアテのないグラフをつくり、膨大なデータが集まって当たり前すぎる結論が出てくる。

モノづくりの世界にも影響が出ています。3次元CADなどで、非常に安易に図面がつくれるようになりました。本当は2次元の図面を書くのにも3次元をイメージして、頭の中でいろんなことを考えてつくっていたのが、CADデータすらコピペしてきて、チャチャッとつくってしまうので、実際にモノをつくったときに組み上がらないとか、うまくつながらないとか。そんなことが起きていたりします。

これは、みんなが加害者で被害者。相当にいろんな形で静かにIT中毒が蔓延しています。しかし、私は、この問題について現場や中間管理職の人たちを批判していません。

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武政 秀明
たけまさ ひであき / Hideaki Takemasa

1998年関西大学総合情報学部卒。国産大手自動車系ディーラーのセールスマン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年4月から東洋経済オンライン編集部。東洋経済オンライン副編集長を経て、2018年12月から東洋経済オンライン編集長。2020年5月、過去最高となる月間3億0457万PVを記録。2020年10月から2023年3月まで東洋経済オンライン編集部長。趣味はランニング。フルマラソンのベストタイムは2時間49分11秒(2012年勝田全国マラソン)。

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