「IT中毒」が創造力を奪う ITのプロが警告する、日本企業の新たな病(上)

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中間管理職にはメールがどんどん来ますが、「俺はメール見ない」とは言えません。部下から突き上げられ、上からプレッシャーがかかるからです。しかし、たとえば8割は見る必要のない内容だったりします。

今は不景気で、生き残りに対して非常にシビアな中で、中間管理職は、経営的な方向や戦略を理解して、なすべきことをかみ砕いて、実働部隊を率いなければならない人たちです。いわば組織力の要の人たちが、ITによって、主業務から離されている現実がある。そして私が「KSI」と呼ぶ中間管理職がはびこっている。

8割が組織の足を引っ張る

――KSI?

「こなして(K)、さばいて(S)、いなす(I)」人たちです。それが優秀だと、上も評価したり、登用したりしている。KSIの本人たちも優秀な管理職だと思っている。本来そうでない人たちも、KSIになっている。こんなのは本業に向いた人たちじゃない。あるいは本業に向けた状態じゃない。

現場でみてもITで時間に追われてヒマな人が少なくなったことが、組織に変化をもたらしています。「2:6:2の法則」はご存じでしょう?「組織の上位2割が引っ張り、6割が中庸で、2割が足を引っ張ってぶらさがっている」と一般的に言われる状況です。それが「2:8」になっている。上位2割は変わりませんが、足を引っ張ってぶら下がっている人が8割。6割の中庸な人がローパフォーマーになっているのです。

以前はヒマな人が分かりやすかったので、仕事ができる人に巻き込まれて成果を出すことができました。しかし、今はやたらと画面にかじりついて忙しそうにしている。ハイパフォーマーが成果を出す瞬間や、お客さんを喜ばせたり、はたまた怒らせたりと、ビジネスの現実的な場面に接する機会が大幅に奪われています。つまらないメール整理のために。

そして、情報の洪水は「バカのロングテール」(BLT)と私が著書で書いている状況も生み出しています。価値の高い、役立つ情報があふれて洪水になっているのならいいですが、実際には価値の低い情報やコンテンツを、組織やコミュニティの参加者がよってたかって拡大再生産しているのです。

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