タテ、ヨコ、ナナメ。大人の人間関係は複雑です。
文科省の失政である、いわゆる「ゆとり教育」のもとで育った世代の人たちにとって、「自分らしさ」の前に、まず既存の価値観にならい、秩序に合わせていかなければいけない、社会人としての日々は、スタート時には、不安と緊張と憤りの連続ではないかと思います。
でも、しょうがない。大人の世界とはそんなものです。発言したければ、まず聞いてもらえるだけの実力をつけてからにしろ。それが大人の世界です。
もっとも、最近は、それでは入社まもない若手の離職が増えて困るので、メンターをつけて、彼らが職場になじめるよう配慮をしたり、達成が難しそうであれば、業務の難易度を下げ、落ち込まないように配慮をしたり、企業側の対応も変わってきているようですが。
ただ、社会自体のしくみは、何ら変わっているわけではないので、いつかは、それに合わせなければいけないときがくる。
上下左右の人間関係の中で、距離感を測りながら、徐々に自分の意見が反映されるような環境を、自ら築いていかなければならないときがくるのです。
「隣は何をする人ぞ?」が、役にたつ。
この連載でも、たびたびお話ししてきたように、バーは、大人が、名刺ぬきで、ひとりの人間として、酒と会話を楽しみに行くところ。
なので、隣に座っている人が、どんな組織に属していて、あるいはフリーで、どんな仕事をしている人なのかは、顔なじみにならない限り、わからないのが普通です。むしろ、そこがバーのいいところ。
ちなみに、Hollyの常連さんには、経済紙の一面に掲載されるような案件に関わっておられる金融機関の幹部、ビジネス書の分野でベストセラーを数多く輩出してらっしゃる編集者。
あるいは某エネルギー関係の研究所で次世代エネルギー開発のリーダーをされている方、また、大学で教鞭をとっている心理学者(女性)や、世界の貧困地域をかけまわって、質の高いドキュメンタリー映像をつくっている女性カメラマン。
わたしが尊敬する方たちばかりですが、そんな方たちも、カウンターではただの酒好きの酔っぱらい(失礼!)。そして、そんな大きな仕事をしてらっしゃる方ほど、いばらず、自慢せず、謙虚。多忙な日々の中、やっと作り出せたバーでの時間を、しみじみと楽しんでらっしゃいます。
もしあなたが、若手のビジネスパーソンであっても、バーで飲むということは、このような方たちと、隣り合わせになるチャンスがあるということです。
ビジネスの場での、取引先の立場のある方との会話は、緊張するものです。
(変なことを言ったらどうしよう)
(でも、ずっと黙っているのも、何も考えてない奴と思われそうだし)
そんなとき、うまく行きつけにできたバーで隣り合わせになり、会話がはずんだ常連さん、その取引先の方と同様の職種、近い職位の方のお顔が浮かんだら。
(よし!)と、コミュニケーションの自信が生まれると思いませんか?
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