電子化の先にあるはずの展望とは?
ベゾス氏や赤松さんのビジョンに触れて感じるのは、それがあくまで「ユーザー(読み手)本位」であること。ユーザーにデジタルならではの経験を提供することを第一義にしていると感じます。
一方、日本のメーカーからはあまり電子化の先にあるはずの展望は聞こえてこず、こうしたところ、よくも悪くも個人のカリスマ性に依存しない日本企業の体質を感じます。
もっとも私自身、2010年より文芸、学芸、デジタルメディアなど諸分野の書き手の方々と『AiR(エア)』という電子雑誌を作っています。ですのでこの分野の未来図についてはひとごとではない。
「おまえはどうなんだ? どんなビジョンを描いているのだ」という話なのですが、自分の場合は「格差が拡大するメディアの世界に、“中間層”を確保したい」と考えています。
もはや「不況が長引く」が冠言葉になって久しい出版分野ですが、その現場で何が起こっているかというと、それは「売れ筋への集中と商品寿命の短サイクル化」。他の小売り分野に見られるものとまったく同じ流れです。
売れる作品は、映像化などをきっかけに短期間に大きく売れていく。その一方で、普通の作品は膨大な情報の海の中で埋没してしまい、あっという間に市場から撤退していくことになる。こうした二極化が年々激しくなってきています。
この傾向が続くと作品の多様性が市場から失われ、実験的な試みはあまり実践できなくなる。また新しい才能の登用のハードルもますます高くなることでしょう。話題となるのは「映像化された作品やタレントさんの本だけ」という状況が、到来してしまうかもしれません。
しかし、個人でも流通頒布手段を獲得することができ、コスト構造が大きく変わる電子書籍は、作品発表の新しい選択肢となる可能性を持っている。そう考えて、取り組んでいます。
幸い『AiR』は2010年に刊行した第1号がいまだに売れているという、電子では極めて珍しい作品となっています。「自分の読みたいものがここにあった」と感じていただいているとしたら、こんなにありがたいことはありません。
撮影:今井康一
【初出:2012.12.29-2013.1.5「週刊東洋経済(2013年大予測・2050年未来予測)」】
(担当者通信欄)
キンドルはじめ電子書籍端末を買ったという声が、周りでもちらほら聞こえるようになってきました。何度もくるぞくるぞと言われてきた電子書籍元年。狼少年と化していたようにも思いますが、今年こそついに本当に来るのでしょうか。
さて、堀田純司先生の「夜明けの自宅警備日誌」の最新の記事は2013年1月7日(月)発売の「週刊東洋経済(特集は、メイカーズ革命)」で読めます!
【改革より継承を、2世代作品に見えるもの】
変革とは本来時間のかかるもの、ついつい性急に改革と成果を求めてしまいがちな私達ですが、いっそ「継承」をテーマとして考えると、2世代作品(たとえば「機動戦士ガンダムUC」)から見えてくるものがある?必見です!
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