北海道小2置き去りに学ぶ「しつけの想定外」

「不登校ゼロ」奇跡の小学校長の神言

「校長という権力で抑えつけるのではなく、子どもの心を耕せる人。私たちがつかめない子どもの本音を引き出していた」(同僚だった元教師)

その道のりや教育の原点は、昨秋上梓した著書『「みんなの学校」が教えてくれたこと 学び合いと育ち合いを見届けた3290日』(小学館)に詳しい。

どうなるのか想像させ、納得させる

――生還した男児の父親は「人や車に石を投げたので、しつけのつもりで置き去りにした」と。このような場合、どう向き合ったらよいでしょうか?

 木村泰子さん

まずは「自分に石が当たったらどうなの?」と子どもに尋ねてほしい。「誰かが投げた石が自分の目に当たって、一生目が見えなくなったらどうなるかな?」と想像させる。これらを「しつけ」と表現するなら、この場面で親が目指すべきは「なぜ石を投げてはいけないか」を子どもに納得させることです。

――なるほど。多くの親たちは、しつけの目的が明確でないのかもしれません。電車で騒いでいる子どもに「静かにしないと怒るよ」としかる親がいますが、それでは「なぜ静かにしないといけないのか」が伝わりません。

その通り。「怒られるから静かにする」という論法になるので、何度でも繰り返します。「これは悪いことだ」とわからせることがしつけの目的です。それと、なぜ石を投げたかも聞いてください。何かに腹が立って投げたのなら「何に腹が立ったの?」と聞いてみる。小学2年生はもちろん、もっと下の年齢でもその道理はわかります。

――北海道での出来事から学べることはありますか。

2つあると思います。ひとつは子どもの「逆表現」を大人がもっと理解することです。1回目に車から降ろしたのは、恐らく親御さんにとって想定内のことです。すぐに男児は一生懸命走って車を追いかけてきた。彼が受けた恐怖は大きかったはずです。

そこで「なんで置いてくんだよ!」などと逆切れしていたかは不明ですが、あまりに強い恐怖にさらされると、動揺した子どもは、時として本当の感情とは逆の表現をすることがある。反省したくても、怒りや照れくささなどが先に立つのです。

――ともかく「言うことを聞かなかった」とお父さんはおっしゃっています。

そこは親として「想定外」のことだったのかもしれません。最初は「しつけ」のつもりで「反省させる」ことが目的だったのに、2度目に車から降ろしたときは「どうして自分たちの言うことを聞かないのだ」という感情が上回ってしまい、目的が変容してしまったのでしょう。しつけの場面において、目的がブレるとよい結果は得られないし、子どもの成長にもつながりません。

――想定外になると、よけい感情的になりますしね。

そこで、焦った表情やたたずまいから反省しているかどうかを読み取ってほしかった。あくまで想像の範囲ですが「反省してないでしょう?」としかっているうちに親側がオーバーヒートしてしまった。よくあることです。逆表現を読み取れなかったのでしょう。

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