情熱と創意工夫が「ゆうばり映画祭」を残した

困難を乗り越え続ける「地方映画祭」<1>

「ゆうばり映画祭」では、ハリウッド大作から自主制作作品まで、幅広いラインアップの作品が上映される。今年の招待作品は、レオナルド・ディカプリオがアカデミー賞主演男優賞を獲得した『レヴェナント:蘇えりし者』をはじめとして、『ルーム』『ブルックリン』といったオスカーレースを騒がせた作品、「1000年にひとりの逸材」と呼ばれたアイドル橋本環奈の初主演作『セーラー服と機関銃 -卒業-』など。地方映画祭のラインアップとは思えないほどの、豪華話題作が続々と上映された。

一方で、実際の暴力事件をベースにした物語を、富士宮に住む本物の不良たちを俳優として起用して描き出した『孤高の遠吠』、現役女子高生監督(現在は卒業)・松本花奈がメガホンをとった『脱脱脱脱17』といった話題のインディーズムービー、果ては、韓国の鬼才キム・ギドク監督が福島原発事故をテーマにしたことで日本の映画会社が公開に二の足を踏んでいる問題作『STOP(原題)』までも上映。5日間の会期中に上映される作品は、“ごった煮”という表現がピッタリで、参加者は映画漬けの日々を過ごすこととなる。

2007年、市の財政悪化で存続の危機に

夕張市内の様子。市は2007年に財政再建団体となったが、有志らの努力で映画祭は存続

今年の2月で26回目の開催となった「ゆうばり映画祭」だが、その過程は決して平たんなものではなかった。2006年6月、財政悪化が深刻なため、夕張市が国への財政再建団体入りを表明。もはや映画祭どころではなくなった。そしてその年の7月には翌年の映画祭を中止するということが早々に決定した。

2007年に「財政再建団体」に指定され、事実上財政破綻した。再建に向け苦難の道を歩み始めた夕張市だったが、「映画祭をなくしたくない。1年でも空白の期間を作ってはいけない」という映画人や映画ファン、市民有志たちのバックアップにより、急きょ2007年2月に「ゆうばり応援映画祭」の開催が決まった。この時はシルベスター・スタローン主演の『ロッキー・ザ・ファイナル』がオープニング作品に選ばれ、会場にはロッキーの銅像も来場。「何度、打ちのめされても、再び立ち上げるんだ」と同作が訴えかけた「ネバー・ギブ・アップ」の精神は、多くの市民の心を揺さぶった。

「ここまで続いた映画祭をなくすのは惜しい」といった周囲の励ましの声に始まり、映画祭を運営するためのNPO法人ゆうばりファンタの設立、資金集めなどが実を結び、翌2008年には早くも「復活映画祭」として復活が決定。「市民の側からの映画祭復活こそがこれからの夕張再生の象徴である」という志のもと、最盛時には1億円以上あったと言われる予算は縮小を余儀なくされたものの、「映画への愛」「ふるさとへの愛」というふたつの柱はぶれることなく、映画祭は今でも続けられている。

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