情熱と創意工夫が「ゆうばり映画祭」を残した

困難を乗り越え続ける「地方映画祭」<1>

しかし、2015年に新たな問題が降りかかる。メーン会場として使用されていた市民会館が老朽化により、閉館することとなったのだ。次の会場は未定。当然ながら新たな施設を建て直すという選択肢は、今の夕張市にはない。

一度は、財政破綻前の映画祭メーン会場として使用されていた「ゆうばり文化スポーツセンター」をもう一度使えないかという案も浮上した。超大型スクリーン、最高の音響設備を備えた同施設で映画祭を行う、というのは悪くない案だとも思われた。しかし、調査の結果、映画祭を開催するための上映設備が撤去されていることが明らかになった。再び映画祭用に使うためには、追加予算が必要となる。

しかし、会場が見つからずに八方ふさがりになるかと思われたその時、ひとりのスタッフが「『ひまわり』の体育館でやればいい」と提案してきた。「ひまわり」とは旧北海道立夕張北高校の校舎を改装した宿泊施設だ。このコロンブスの卵的なアイデアに、ゆうばり映画祭の澤田直矢実行委員長は、「あそこは宿泊場所という固定概念があったので目からウロコのアイデアだった。危機のときこそ、創意工夫が必要だと思った」と解決の糸口が見つかった経緯を振り返る。

GLAYもサポーターに加わる

映画祭のシンポジウムで撮影に臨む関係者。左から澤田直矢実行委員長、秋元克広札幌市長、鈴木直道夕張市長、TEAM NACSらが所属するクリエイティブオフィスキューの鈴井亜由美代表取締役

さらに、ゆうばり映画祭を存続させるための活動も積極的に展開する。2015年末には「ゆうばり映画祭サポーターズクラブ」が発足した。寄付金を募る「プライベート・サポーター」と、人材を募る「ボランティア・サポーター」の両軸で映画祭の応援団を発掘しようという試みだ。「これはお金集めというよりは、むしろ人材集めという側面が大きい」と澤田実行委員長、「うちの事務局には、学生ボランティアで映画祭に来てから、映画祭の仕事をやりたいと思い立ち、夕張に移住してきた女性がいます。やはりわれわれも新しい仲間を引き込んでいかなきゃいけない。われわれはこの映画祭の価値については自負していますが、北海道内でのゆうばり映画祭の知名度って実はそれほどないんです。だからこそ北海道の団体などを巻き込んでいかなきゃいけないと思っています」と続けた。

そんな中、映画祭に強力なサポーターが加わった。北海道函館市出身のロックバンドGLAYである。「突然、メールが来たんでビックリしました。名字にGLAY、名前にTERUとあったんで、最初は冗談だろと思った」と笑う澤田実行委員長。しかし、それは冗談でもなく「何か一緒にコラボレーションできることがないか、これから話し合いましょう」という彼らの熱い思いから来たものだった。

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