夕張再生市長、「方向性はできたと思う」 毎秒67円ずつ借金返済が進行中

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すずき・なおみち●1981年生まれ。埼玉県三郷市出身。99年東京都庁入庁。法政大学法学部卒業(都庁に勤めながら4年間で卒業)。2008年夕張市へ派遣、2010年4月内閣府地域主権戦略室へ出向、夕張市行政参与。同年11月都庁を退職。2011年4月、30歳1カ月(当時全国最年少)で夕張市長に就任。著書に『やらなきゃゼロ!』。(撮影:梅谷秀司)
人口減少ショックが日本を覆い、随所でその影響が表面化しだした。課題先進地・夕張市長として若さとアイデアを武器にその時代を「生き抜くヒント」とは。

──夕張市のホームページに「借金時計」があります。

ホームページに借金の増減を公開している自治体はほかにもあるが、夕張市の場合は唯一期限がある。減少による残高と2027年3月までの再生期間の残りの日数をカウントダウンしている。夕張市の場合、借金は1秒間に67円減り続けている。市長になった当時、「夕張は今どういう状況ですか」とよく聞かれた。それを視覚的にわかりやすく伝えようと表示している。

──その再生期間とは。

夕張は財政破綻で認識されていることが多い。確かに今、財政再生団体になっているが、なって5年目。借金が第三セクターへの「飛ばし」で雪だるま式に増えて8年前に破綻。旧法の国の管理下で3年間、再建に取り組む財政再建団体になり、新法での財政再生団体の適用を受けている。適用は夕張が唯一。第二の夕張になるなと、ある種、見せしめのような位置づけだが、ほかの市町村も背負う共通の問題もあり、市町村にとって議論の材料、学べる存在になっているといえるかもしれない。

財源を徹底的にひねり出した

──市民生活はどうなっているのですか。

再生のためまず手掛けたのが歳出の抑制だった。要は出ていくおカネを抑える。390人いた職員を140人近くまで減らし、給与額も年収ベースで40%カット。ちなみに市長は70%カットし、議員は18人から半分の9人にし、ここでも報酬は40%カットした。この削減効果で人件費はこれまで80億円近く圧縮できた。年間の市税収入が8億円だから、革命的なことをやったわけだ。

市民のみなさんにも負担をお願いした。各種団体への補助金削減で16億円浮かし、東京23区よりやや広い面積で小学校は6校を1校、中学校も3校を1校に一気に集約した。役所の出先機関は5カ所のうち4カ所を廃止。今は夕張には図書館はない。市民会館や集会場も全廃した。直接的な負担増では、施設使用料や水道料の値上げ。市民税の均等割も法律上の上限、4000円にしている。

要約して言えば、人件費を減らす、補助金はやめる。使用料、税金を引き上げる。そうこうして、百十数億円という財源をひねり出した。借金の返済額は今年度末で70億円になる見込みだ。夕張はやみくもに削減してきたが、前例となっていくことに実は怖さも感じている。

──人口減少に自治体が独自にできることの例も実践しています。

第一に紹介できるのはコンパクトシティの取り組みだ。夕張の世帯数は5500ぐらい。それに対して3700の公営住宅を抱えていた。炭鉱会社から引き取ったものだ。いわゆる政策住宅だからこれが過半を占めているのは街の構造としておかしい。だが、街の集約を考えたときには、弱みではなく強みに転じる。公営住宅の比率が高いことは行政が中心になって都市構造を変えるうえで優位性になっている。

夕張は今後20年間でさらに人口が半減するとみられている。その半減したときにも持続可能な街の機能を維持するために、今から集約をしていこうとコンパクトシティ計画を作り、ほぼ2年でまず200世帯が移転した。小さい事例かもしれないが、実現できている。日本は大都市や中核的都市以外の自治体が、数としてはいちばん多い。そこがどう効率化されるかが、今後の日本の肝だ。その実践例が夕張。成功していることもしていないことも含めて面白い自治体だと認識してもらえている。

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