イオン「食品売り場」の知られざる裏側 最大手が打つ専門スーパーへの対抗策
イオンのお寿司は酢飯の味が7種類ある。各地域によってそれぞれ地元の人の好みが違うからだ。大きく分けると関西は甘みが強い酢飯、関東では酸味を強くしている。開発段階で、実際にその土地のお客さんの意見を聞いて味を調節する。
巻寿司に使っている海苔をよく見ると、無数の穴が空いていることに気づく。これはお客から「巻き寿司の海苔が噛み切りにくい」という声に応えた結果だ。お年寄りでも食べやすくなっているという。
イオンの鮮魚を守る鮮魚士
鮮魚売り場に目を転じてみよう。人気なのは「朝獲れ鮮魚」というサービス。お昼過ぎの午後1時に最も鮮度が良い鮮魚が届く仕組みだ。
普通のスーパーでは、鮮魚の仕入れは、市場を通して仕入れられる。しかし、イオンでは市場からではなく直接漁港と契約し鮮魚の仕入れも行っている。通常、漁港で水揚げされた魚のほとんどが1日かけて市場に一度集められ、その後に市場を通して店舗に届く。
一方で、イオンのように漁港から直接仕入れれば、市場に通す時間が省略される。その日に水揚げされた魚が販売できるのだ。イオンの従業員である専門の鮮魚士の資格を持ったバイヤーが、直接漁港まで出向きセリ落としを行っている。
鮮魚士という名前は、聞き馴染みがないかもしれないが厚生労働省に認定された専門の資格。魚の目利き、調理のプロフェッショナルなのだ。イオンでは、このような鮮魚士たちが日本全国に49人いて、各地方の旬の魚を買い付けている。
イオンの「朝獲れ鮮魚」では、普通スーパーに置いていない目新しい鮮魚が置かれている。ある日、セリ落とした魚を見てみると……アジなど一般的な魚に混じって色鮮やかなヒレが特徴的な「ホウボウ」、ぎょろっとした目が特徴的な「テンス」など……。
このような珍しい魚を店頭に置くことでお客さんの目につきやすく立ち止まってくれるだけでなく、家庭での食事の時にも話題の一つにもなるのだという。
全国に展開する大手スーパーのネームバリューや信頼性があっても、画一的な商品展開やサービス内容では特徴のある食品スーパーの後塵を拝してしまう。各店舗がそれぞれどれだけ地域に密着し、小回りの利いた運営ができるかがカギを握っている。
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